有機質土(T):層厚は約0.5mで黒褐色を呈する。さらに、本層は上位より腐植土層(T−A)・細〜中粒砂層(T−B)・礫混じり(φ2〜3cm)砂層(T−C)の3層に細分される。最下部の礫混じり砂層は、断層付近で、深さ30cm程度のチャネル構造となっており、旧流路もしくは小さな沢筋にあたっていたと思われる。断層上部を覆い、変位を受けていない。
砂礫層(U):層厚は0.7m程度で、黒褐色〜茶褐色を呈する。全体に幅2.5m、深さ70cmのチャネル構造を示しており、第T層堆積前の沢の流心と考えられる。φ3〜10cmの角礫が優勢で、マトリックスは粗粒砂で構成される。最下部には、厚さ10〜20cmの粘土質腐植層が堆積している。ねばついた手触りで、粘土が優勢である。上部の砂礫部とは不整合で接する。断層と接する位置には分布していない。
砂礫層(V):層厚は約0.3mで、明褐色を呈する。φ3〜15cmの亜角〜角礫主体で、マトリックスは中−粗粒砂から構成される。ほぼ水平に堆積しているが、葉理構造などはみられない。第T層最下部及び第U層のチャネルによって削られ、その分布範囲は小さい。断層上部を覆い、変位を受けていない。
砂礫層(W):層厚は約2.5mで、黒褐色〜灰褐色を呈する。幅4.5m、深さ2.5mの谷を埋積した堆積物で、全体的に炭化物(葉、木片)を多く含む。φ5〜15cmの亜角〜角礫を主体とするが、しばしばφ30〜50cmの巨礫を含む。また、本層の中部から上部にかけて、層厚1〜2cmの薄い粘土質腐植土層を連続的にはさむ。これらは断層と接して分布していない。
砂礫層(X):層厚約1mで、褐色を呈する。φ5〜20cmの亜円〜亜角礫を主体とし、マトリックスは粗粒砂である。下部は礫主体で、中〜上部にかけては砂優勢である。第W層堆積前の表層堆積物と考えられる。断層と接して分布していない。
砂礫層(Y)(図4−17):層厚は1.0〜4.0mで、黄褐色を呈する。砂優勢の砂礫層で、断層の両側に分布する。小礫主体でφ10cm以上の礫は少ない。最下部の礫混じり砂層には弱いグレイディング構造が観察される。
断層より東側においては、風化の進んだ基盤と断層関係で接しているがその境界はやや不明瞭である。この砂礫層は西側では、明瞭な断層関係で基盤岩と接し、境界部には暗青色の断層粘土がはりついている。炭化物、火山ガラスは検出されなかった。
断層部:断層の走向はNS〜N10°E、傾斜75°SE〜90°で、基盤花崗岩中の塩基性岩脈に沿って出現する。破砕帯の幅は、10〜20cmで、幅1〜3cmの暗緑灰色を呈する断層粘土をはさむ。この粘土は、両端の2〜5mmが比較的シャ−プであり、鉱物組織はほとんどみられない。一方、このシャ−プな粘土の間は完全に粘土化しておらず、ざらついた手触りで、鉱物組織が観察できる破砕部が存在する。断層粘土は、断層上部に向かって不明瞭となり、基盤表層付近では消滅する。断層西端において第Y層と接し、断層を覆う部分でこれを変位させるが、垂直成分はほとんどみられない。また、第Y層を不整合で覆う第V層までは切っていない。