(1)【No.3トレンチ】

本トレンチ地点では、層厚約4mの堆積物が基盤を覆っており、全体的に南東へ傾斜している。これらは堆積状態と層相から、6層に分けられる。以下その特徴を述べる(図3−27)。

有機質土(T):層厚は0.4〜1.2mで、上部は青灰色の礫混じり砂質土から構成されている。最近までの耕作土もしくは盛土である。下部は黒褐色を呈する有機質土で、植物根、切り株などの植物遺骸を多量に含む。パラレルラミナ構造が明瞭であるため、斜面下部の比較的安定した堆積環境下で累重した堆積物であると推測される。

砂礫層(U):層厚は1.0〜1.4mで褐灰〜明褐色を呈する。φ0.5〜1.5cmの亜円礫を主体とするが、淘汰は悪い。マトリックスは中〜粗粒砂からなり、火山ガラス(アカホヤ火山灰)が比較的多く混入している。最下部は砂優勢砂礫層で、層厚は10〜15cmである。この層は東方に向かって厚くなり(80cm以上)、徐々に礫優勢砂礫へと漸移する。ここでは、上部の礫層よりも礫量が増えるとともに、マトリックスは細粒分が卓越し、比較的粘性度が高くなる。

有機質土(V):層厚は0.1〜0.7mで、東方に向かって厚くなる。小礫を含む、粘土質な腐植土で、最下部は砂質分が優勢になる。全体に土壌化が進み、炭化物は見られない。

砂礫層(W):層厚は0.9〜1.4mで褐灰〜明褐色を呈する。φ0.5〜1.5cmの亜円礫を主体とし、マトリックスは弱いグレイディングを示す粗粒砂で構成される。層相は第U層と類似するが、礫がやや大きく、しばしばφ3〜5cmのものも含む。

有機質土(X):層厚は0.1〜0.2mであまり変化はなく、φ0.5cm程度の礫が混じる。層相は第V層に類似する。

礫混じり粘土層(W):層厚は0.5 〜1.5m以上で褐色を呈する。φ2〜5cm程度のクサリ礫(角〜亜角礫)を含む粘性土で、火山ガラス(AT:姶良火山灰)を比較的多く混入する。

基盤岩:トレンチのほぼ中央部の基盤花崗岩中に断層が出現する(図3−28)。走向はN25°E、傾斜は70°NWで、幅5〜15cmの粘土を挟む。熱水変質脈や破砕帯を伴い、全体としては幅1m前後の破砕帯をなしている。粘土は破砕帯の両端に2枚あり、その間(幅30cm程度)は変質し、クラックが著しく発達している。破砕帯の東縁の粘土脈(幅2〜5cm)は、基盤花崗岩中の剪断面で切られていることから、これは古い断層運動に伴って生じた粘土といえる。

一方、西縁の粘土(幅2〜5cm)は、やや撓んではいるものの連続していることから、最近の断層運動はこの面において活動していると考えられる。また粘土は東側境界が比較的シャ−プであり、西側の基盤に向かって徐々にその境界が不明瞭となる。

断層の基盤表層(マサ化が著しい)への延長は、粘土、断層線とも不明瞭となり、はっきりしなくなる。基盤を覆う第Y層は切っていない。