3−3−2 踏査地域の地質概要

踏査地域の地質概要については、高橋(1991)(4)により記載されている。それによれば、本地域は広島花崗岩類と総称される中粒角閃石黒雲母花崗岩と中−粗粒黒雲母花崗岩が基盤岩として分布している。そのうち、己斐断層北部の武田山周辺部及び断層南部の西区高須地区付近は主として中粒角閃石黒雲母花崗岩である。主に石英、斜長石、カリ長石、黒雲母、角閃石からなり、色指数は5〜7程度である。中粒均質で等粒状のものが一般的であるが、中−粗粒黒雲母花崗岩との境界付近では斑状組織を呈することが多い。主成分鉱物の粒径は2〜3mmだが一部5mm前後に達することもある。本岩は長径5〜20cm程度の暗色包有物を含むこともある。ただし面構造として認識できるほど系統だって配列はしていない。一方、中−粗粒黒雲母花崗岩は、己斐峠、畑峠を含む己斐上地区から安佐南区祇園町にかけて分布し、主に石英、カリ長石、斜長石、黒雲母からなり、色指数は2〜5程度である。粗粒で塊状かつ等粒状の花崗岩で、主成分鉱物の粒径は石英及び斜長石が1〜4mm、カリ長石は4〜5mm程度で一部10mm以上に達するものがある。本岩と中粒角閃石黒雲母花崗岩との野外での識別は、新鮮岩盤においては色指数や角閃石の有無などから比較的容易である。ただ己斐断層分布地域は風化が進んで苦鉄質鉱物の区別が困難となるので、粒度の違いと肉眼による色指数をもとに区別される。なおこれらの花崗岩類の他に細粒黒雲母花崗岩(色指数の小さなアプライトを含む)、石英閃緑斑岩及び珪長質岩類の岩脈も小規模ながら認められる。広島花崗岩類のうち、佐伯区八幡川魚切ダム付近の中粒角閃石黒雲母花崗岩については、黒雲母のK−Ar年代として82.9±2.8Ma、すなわち白亜紀後期の年代値が得られている。

これら基盤岩を覆う堆積物としては、第四紀の崖錐及び崩積性堆積物並びに現河床堆積物等がある。これらは主に山地緩斜面や谷の出口、主要河川沿いに分布し、花崗岩類を主とする礫(亜角〜亜円礫)、砂、シルトから構成されている。厚さは場所によって異なるが、己斐断層沿いの八幡川流域で数m〜10m程度である。