6−7 まとめと今後の課題

今回の調査によって,函館平野西縁断層帯では,およそ7,000年から9,000年の間隔でマグニチュード6.6〜7.2の地震を起す断層運動が存在したことが明らかになった.また,最も新しい活動は約8,000年前に起こっており,断層運動が周期的に繰り返すとすれば,近い将来に同程度の規模の地震が発生する可能性がある.ただし,近い将来といっても,時間的な予測精度には幅がある.したがって,いたずらに不安になる必要はないが,活動間隔の年代幅の中間値を既に超えており,いざという場合の備えを忘れてはならない.そのためには,住民のひとりひとり,地域,自治体,国そして防災関係機関が一体となって,それぞれの段階での地震対策を進めてゆき,地域の全体的な防災力を高めて,被害を最小限にする努力が必要である.

とりあえず,自分たちの住む地域の活断層の位置や,自分の住む場所の地盤条件について,よく確認し,建物や室内の安全性等について十分な配慮をしてゆきたい.活断層の上に重要な構造物をつくることは避けたい.また,年代の幅を考えるならば,このことを次の世代へ伝えてゆくことも重要である.活断層の周辺はもとより函館平野に住む人々は,地震との共生という観点に立ち,日頃から特に地震防災に心がけてゆく必要がある.

なお,個々の活断層に関してはまだ,いくつかの課題が残っている.活動間隔の確定に関しては,渡島大野断層では段丘面の累積変位が明らかなので,各段丘面の編年を詳細に検討することがこの問題を解く鍵となると考えられる.富川断層については活動性や構造など不明確な点が多い.特に海域に延長している場合これが起震断層になるとすると津波の問題が生じる.従って海域での音波探査や,深部構造の確認が必要である.