6−3−1 渡島大野断層

トレンチ調査の結果,最新活動期は市渡中央トレンチの黒色土壌(泥炭)の撓曲で示されるように,約8,800y.B.P以降から約7,800y.B.P.以前であることがほぼ明らかになった(図6−6).このイベントは,向野トレンチでは濁川テフラ(12ka)に変形を与え,また,市渡南トレンチでは変形した濁川テフラとそれをおおう非変形の橙色火山灰/黒色土壌(約6,500〜7,800y.B.P)の存在によっても示される.最新活動イベントにおける垂直変位量は約1mである.

トレンチ調査の結果により,最新活動期から現在までの間隔はおよそ8,000年であり,活動間隔はこれより長いと見ることができる.一方,最新活動期の1つ前のイベントはおよそ14ka以前であり,その間隔は最短で5,000〜6,000年である.

今回のトレンチ調査では,17ka以前のイベントの年代は明確でない.1995年の北海道教育大によるトレンチ調査(渡島大野活断層調査班,1996)で,田近(1996)は17ka以前のイベントが存在した根拠として,サイト3(=向野トレンチ)の礫層上面とKo−hテフラとの変位量の差,およびサイト2における砂シルトからなるプリズム層の存在という2つの事実をあげた.この砂・シルトプリズムはピンクシルトを含むロームに覆われることからイベントはピンクシルト層の堆積の直前と見ることができる.W章で述べたロームの平均堆積速度(約3.5cm/kyr)からピンクシルト層(層厚20cm)の下底の年代を求めると,22〜23kaとなる.したがって,>14kaのイベントとの活動の間隔は,およそ8,000〜9,000年となる.

以上のように,得られた活動間隔の値は幅が大きく精度もまちまちであるが,おおむね7,000年から9,000年程度の間隔で活動してきたものと推定される.