重力探査結果をもとに3層モデルによる2次元地下構造(密度構造)の解析を行った結果を図6−5に示す.なお,解析にあたってはタルワニの方法(Talwani et al.,1959)を用い,密度をそれぞれ図に示したように仮定した.密度境界のコントロールポイントとして七飯町大中山(B1),七飯町中島(B2)および大野町本町(B3)における3本の坑井地質データを用い,計算値が測定されたブーゲ異常値を説明しうるようにモデルを適宜修正した.図中fは活断層を,B1〜B3はコントロールポイントを示している.
これによれば,函館平野西縁断層帯は,西側の微少な高まりと北東側の大きな高まりに挟まれたトラフ状の低みの中央部に位置している.このことは,断層帯に沿う西側の基盤の上昇量が相対的に小さいこと,すなわち,この断層帯の活動がごく新しく活動度も相対的に小さいことを示していると考えられる.また,西側基盤が小ブロックに分かれているとすると,その形状が地表の断層の分布形態に反映している可能性がある.
この地域の下部更新統(富川層)は,全体として函館平野西縁断層帯の各断層に調和的な構造をとるが,その構造が必ずしも地形的なリニアメントと一致する訳ではない(付図3).富川層はNNW−SSEからNNE−SSWの走向で,全体として東に傾斜しているが,例えば文月川では小崖に対応するように5〜20°程度で緩やかに褶曲する.また,主断層沿いでは,30〜45°程度の傾斜の撓曲構造がみられる.しかし,富川層が70°〜90°の急立した撓曲構造を示す地帯は,むしろ断層の西方に位置する.特に,地形的な変位が不明確な向野断層(2D),および仁山西側の三角末端面の連続で示されるリニアメント(1F)ぞいがそれにあたる.このことは下部更新統堆積以降,現在の主断層の位置で変動が継続した訳ではないことを示しており,一種のスラスト フロント マイグレーションを示すものかもしれない.従って,現在の渡島大野断層は少なくとも中期更新世以降活動的となった断層帯と考えられる.このことは上述の重力調査の結果とも調和的である.