断層変位地形の北端は峠下付近で,国道5号付近まではやや不明瞭な小崖が認められる.この小崖は北西方には連続しないが,延長上の七重発電所西側には山地斜面の高度不連続があり,この部分を北端とした.南端は,大工川南方の撓曲崖が不明瞭となる宗山川付近としたが,この部分は沖積面となっていることから,1km程度は伏在している可能性もある.
仁山南方や大野町文月付近など,断層の走向が大きく変化する地域では,地形的な変位はやや不明瞭となる.特に文月付近での地形変位の不明瞭さは,主断層のセグメンテーションを考える上で重要である.
仁山南方〜市渡付近からは,NE方向の主断層から分岐するようにNNW方向に三角末端面の連続が認められるが,最近の地形面に大きな変位は見られない.
文月付近は,南からNNW方向に延びるセグメント(1A−4)が,向野のNNE方向(1A−3)のセグメントに方向を変える部分にあたる.この屈曲点からNNW方向には,主断層とは逆の西落ちの低断層崖(1D)へ連続するようなリニアメントがある.このことは,文月付近がNNW方向の主断層とこれに斜交する観音山西方のバックスラスト群との一種の蝶番部分にあたることを示している.また,観音山付近は,NNE方向の主断層とNNW方向のバックスラストによってポップアップしたブロックと見られる.このため,観音山東側の向野(1A−3)では見かけの上で変位量が大きくなるのに対して,文月付近では変位が不明瞭となっているものと推定される.これらのことは,必ずしもこれより南の部分と北側部分の断層活動の同時性を示すものではないが,両者が密接に関連することを示している.
平成8年度に実施された浅層反射法地震探査(大野町向野測線)の結果を再解釈した東西の深度断面図を図6−2に示す.断層変位地形に対応した部分に反射面の不連続が認められる.主断層に対応する測点番号450付近からは,深度500m付近まで40°前後西へ傾斜した不連続が推定される.この部分の上盤側の地層はこれに沿って折れ曲がり,東側へのし上ったような形態を示す.