5−1−2 目的および仕様決定の経緯

市渡中央地区のトレンチ調査では,扇状地堆積物の基底部付近までしか地質状況が確認できず,最深部で認められた撓曲の変位を確認する必要がある.このため,断層を挟んで上盤側と下盤側でボーリング調査を実施することとした.目的としては,1)最新活動期を示す撓曲した泥炭層(黒色土壌D層)の高度の確認,2)扇状地下に埋没していると予想されるT6面段丘礫層上面高度の確認,3)同じく下底面高度の確認,および4)基盤(富川層)の構造の確認,である.したがって,扇状地堆積物5m(市渡中央データ),段丘堆積物4〜5m(市渡南データ)および富川層10mとして,深度は各20mとした.正確な変位量の算定には上下盤それぞれ2孔が望ましいが,用地上の制約があり各1孔,計2孔として,トレンチ調査結果と対比し検討することとした.原則として掘削径117.5mmでコアリングを行い,採取不能の場合に備えて比抵抗検層を実施することとした.

掘削機材としては,昨年度に比べ掘削性能の大きなボーリングマシン(THC−1型)を使用した.サンプリングツールスは,軟質な土砂の採取に対応し,掘削におけるボーリングロッドの揚降作業やケーシングパイプ挿入作業の省力化のために,ワイヤーライン式のサンプリングツールス(PQ−WL)を準備した.掘削径をPQサイズにしたのは,ワイヤーライン式での掘削が不能になった時に,従来の掘削方法と掘削径(76mm〜86mm)で増掘を可能にするためと,軟弱な砂礫層を掘削する際に細礫〜中礫サイズの礫をスムーズにサンプラーに取り込むためである.

なお,実際にこれらのツールスを使用した結果(A孔にて),問題点が多くワイヤーライン式での効果が得られなかった.このため,A孔の途中とB孔は砂礫層ではシングルコアチューブ,泥〜砂質な部分ではコアパックチューブをそれぞれ使用した.