4−7 まとめ

本調査の結果をまとめて図4−7−1に示す.

向野トレンチにおいては濁川テフラ(約12ka)に変位が認められ,市渡南トレンチでも濁川テフラに変形があり,約 7,900y.B.P.〜約 7,800y.B.P.の黒色土壌基底および約 6,500y.B.P.の橙褐色火山灰に変位がないことが確認された.さらに,市渡中央トレンチでは約 8,800y.B.P.の黒色土壌に変形が認められ,約 7,500y.B.P.の黒色土壌以上の地層に変位がないことが明らかとなった.これらのことから,渡島大野断層の最新活動は約 8,800y.B.P.以降で約 7,800y.B.P.以前であることがほぼ明らかとなった.

最新活動における変位量は,市渡南トレンチにおける濁川テフラ直下の礫層上面の撓み量が約1m〜約 1.5mであること,市渡中央トレンチにおける濁川テフラ直上の黒色土壌の撓み量が約1mであることから,本断層の単位変位量は1m〜 1.5m程度と推定される.

最新活動の1回前の活動については,市渡南トレンチにおいて礫層基底面の変位量は,礫層上面の変位量の2倍程度であり,礫層堆積中における活動が推定され,同礫層中から採取した試料の14C年代は約14,000y.B.P.の値を示す.このことから,最新活動の1回前の活動は約14ka前前後と考えられる.したがって,活動間隔は最短で約 5,000年となるが,少なくとも約 7,800y.B.P.以降における活動がないことから,間隔はさらに長いものと推定される.

平均変位速度については,向野トレンチにおける段丘礫層の変位量が約9mであり,同礫層の年代はローム層堆積速度一定と仮定すれば約43kaとなることから, 0.2m/103年と算出される.