また,最新活動における単位変位量は礫層上面及び濁川テフラの鉛直変位量から 1.5m程度と推定される.
一方,礫層基底面での鉛直変位は約 2.5m以上と,礫層上面に比べて大きいことから,礫層堆積中に活動があった可能性もある.その場合,礫層中の試料の14C年代が約14kaであることから,その前後に活動があったことになり,この活動が最新活動の1回前の活動となる.本トレンチ南方約 150m地点の円通寺北地点では地表面の変位が約3mと本トレンチの礫層基底面の鉛直変位と同程度であり,2回分の変位に相当するものと考えられる.円通寺北地点では堆積物を覆うローム層中にKo−hテフラ(約17ka)を欠き,濁川テフラ(約12ka)が認められることから,両テフラ間にイベントがあった可能性があり,このイベントは上記の本トレンチにおける礫層堆積中のイベントに対比できる.
また,トレンチ内及びボーリング調査結果により明らかになった富川層の地質構造から,本地点付近では地表部に断層が達していない可能性が高く,地表部では富川層も撓曲変形となっているものと推定される.