4−4−4 トレンチ内の構造

礫層には地形上認められる低崖と調和的な東側低下の撓み状の変形が認められ,鉛直変位量は礫層上面で約 1.5m,礫層基底面で約 2.5m以上である(図4−4−8).

この変形は濁川テフラ(約12ka)にも認められるものの,その上位の黒色土壌基底(約7.9〜7.8ka)及び黒色土壌下部に挟在する橙褐色火山灰(約6.5ka)には変形は認められない.

また,礫層の下位の富川層も,礫層の低下側では10°程度東傾斜であるのに対し,礫層の撓曲部で30°程度まで傾斜を増しており,撓曲構造を示している.

しかし,富川層及びその上位の礫層には断層は認められないことから,富川層の地下構造,特に断層の有無について検討を行うため,トレンチの両側でボーリングを実施した(図4−4−3).

その結果は図4−4−9に示すとおりであり,富川層の層理は東側では水平〜10°程度の東緩傾斜であるが,トレンチ付近を境に西側では25°〜30°程度東傾斜とやや急になる撓曲構造を示しており,トレンチ両側のボーリングにおいても層序的不連続は認められない.これらのことから,本地点付近では地表部及び富川層上部に断層は達しておらず,撓曲変形となっているものと考えられる.