東側のリニアメントが,いわゆる富川断層である.宗山川の北では,富川断層は2面および2'面の撓みで示される撓曲帯であり,リニアメントは3面あるいは3面と2面の段丘崖の間を通過する.3面の一部は変位しているようであるが,変位量は小さい.確実度はT〜Uである.その南の延長上の沖積面には1m以下と見られる東落ちの微妙な段差が見られる.宗山川の南では,リニアメントは2'面と3面との境界部を通過しており,その確実度はU〜Vである.ただし,2面や2'面は傾動しているように見える.2面の変位量を20mとすると,その垂直変位速度は0.2〜0.16m/kyrとなる.以上のように,富川断層は,地形面の平野側への撓み下がりが推定されるものの,断層としてはやや不明瞭なリニアメントしか認められない.
これに対して,西側のリニアメントは明瞭である.沖積面に変位は見られないが,桜岱では1面が西落ちで5〜10m程度変位している.添山でも5〜6mの西落ち変位が認められ,東側の1面は盛り上がるように変形している.この垂直変位速度は0.08m/kyr以下である.