(1)浅層反射法地震探査
大野及び上磯地区で地下構造を把握するために、A・Bの2測線で浅層反射法地震探査を行った。尚、それらの調査・解析方法及び仕様については前章までに詳しく述べてあるので参照されたい。
A,B両測線のマイグレーション断面に、反射面の傾斜の相違、反射波の強弱および連続性に着目し地層区分を行った。その結果を図5−1−1および図5−1−2に示した。地層は上位よりA層、B層、C層およびD層に区分される。
@ A測線
本測線では測定点番号260以西および420より東側では、比較的連続した反射面が確認される。測定点番号260〜420間では反射面の連続性が乏しい。これは礫層等の地質条件が反射しているものと推定される。
比較的反射面が連続する範囲で、その反射面の傾斜を元に地層区分を行うと、測線の西側では、A層は測定点番号200以西で西に傾斜した反射面が確認され、その基底の反射面は180msecから東に向かって浅くなる緩やかな起状を持った反射面で区分される。その下位には200msecから東に緩やかに傾斜した連続性のよい反射面で区分される(C層)。また320msecから360msecへと東に傾斜した連続した顕著な反射面が確認され、この反射面でC層とD層を区分した。一方測線の東側では全体に測定点番号470付近に各反射面で高まりを示す傾向がみられ、その傾斜の違いから各層を区分した。その間の連続性をみると、測定点番号250と280間および410付近に東に向かって急激に浅くなる反射面が確認され、同260から420の間ではC層以下の反射面の連続性が乏しくなる。
反射面の不連続は測定点番号260、280、420で確認定された。これらの位置は既存資料(活断層研究会(1991)新編 日本の活断層、太田・佐藤・渡島半島活断層グループ(1994))のリニアメントの位置とほぼ一致する。
A B測線
測定点番号480付近に向斜軸が、同280付近を中心として背斜構造が確認された。
A層は向斜部で向斜を埋める形で反射面が連続し、背斜部では南東方向に傾斜した反射面が確認されるが、連続性に乏しい。B層はこれらの構造を反映した連続した数条の平行した反射面を示す。B層とC層は非常に振幅の大きい反射面で区分され、またC層とD層は連続した反射面が確認される部分と内部反射の乏しい部分で区分される。
測定点番号470付近の500msec以深においてC層基底の反射面に食い違いがみられ、マイグレーション前の断面ではこの付近に回折波が卓越することから深部に断層を想定した。また測定点番号420付近の背斜翼部に各反射面のずれが確認された。同じように測定点番号280付近の反射面もずれが確認された。この記録から断層の累積性を判断するのは難しいが、測定点番号280付近のずれの位置は既存資料(活断層研究会(1991)新編日本の活断層、太田・佐藤・渡島半島活断層グループ(1994))のリニアメントの位置とほぼ一致する。ただし、測定点番号420付近の位置については、既存の資料ではリニアメントは報告されていない。
(2)IP法電気探査
函館平野西縁活断層系の断層の位置を把握するとともに、トレンチ調査の候補地を検討するために、大野町及び上磯町でA・B2測線のIP法電気探査を実施した。電極配置としてポール・ダイポール法を採用して測定されたデータに対して平滑化拘束条件付き非線型最小二乗法による2次元逆解析を行い、測線下の地下の比抵抗及び充電率の分布を推定した。
@測 線 A
測線Aでは、測線西端からの距離60m付近から東に向かって道路沿いにヒューム管が埋設されており、このヒューム管は測線西端からの距離90〜100mの地点で測線を横切っている。また、距離110m付近にはこのヒューム管につながる深さ約2m・幅約2m・奥行き約3mの集水枡があり、測線はこの枡のすぐ横を通過している。これらのことから、100m付近における水平方向の比抵抗および充電率の不連続的な分布は、上述の人工的構造物の影響であると考える。測線西端からの距離60〜70m付近には特に目立った構造物は認められないことから、この箇所における水平方向の比抵抗および充電率の不連続的な分布は、地質的な変化に対応している可能性もある。
本断面では比抵抗および充電率の分布が水平方向への連続性が良く、その連続性が途切れた部分を境にして両側での構造にほとんど変化がないことから、本測線が本調査で採用した電極間隔に比べて十分大きな変位を伴う断層状の構造を横切っている可能性は低いと考える。ただし、距離60〜70m付近における比抵抗および充電率分布の異常は巨礫などの存在や断層による地層の擾乱を示唆している可能性がある。
A測 線 B
比抵抗の深度方向への変化を土質(あるいは岩相)の違いに起因するものと考えると、距離10〜20mの箇所、距離90〜100m付近では大きな変位を伴う断層状の構造が示唆される。特に、距離90〜100m付近では、ここを境に充電率の分布も大きく異なるため、この位置で変位を伴う断層状の構造を横切っている可能性が高いと考える。