(3)地下レーダ探査

1調査方法

(a)GPR(地下レーダ探査)の原理

GPRとはGround Penetrating Raderの略で、日本では地下レーダと称されている。最近では地層や土層構造の把握だけではなく、路面下の空洞・埋設管の探査、埋蔵文化財などの調査に広く使われている。

その原理は、次の通りである。地下に向けて発射された電磁波が、地下の地層境界・地質構造変化面・埋設物などといった、比誘電率などの電気的性質の異なる部分で反射・屈折し、地上に戻ったエネルギーの一部を捕らえることにより、地下の構造を知ろうとするものである。一般に低周波の電磁波ほど、地上の物質に散乱させられずに地下深くまで浸透させることができる。模式図を図3−3−1に示す。

図3−3−1GPR(地下レーダ)の模式図

           

(b)調査方法

1)測定方法

地下レーダのそくていには下記に示すように、2種類の方法がある。

@プロファイル測定法

送信アンテナと受信アンテナの間隔を一定に保ったまま(アンテナ一体型)で、測線上を移動し、測線下の反射面の形状を時間断面として記録して地下構造を直接把握する方法。もっとも一般的な方法である。

Aワイドアングル測定法

送信アンテナを一定に固定し、受信アンテナだけを移動して電磁波の観測走時から地中の電磁波伝播速度分布を求める方法。

 今回は、一般的な方法であるプロファイル測定法を採用した。

2)操作方法

@各部の電源を入れた後パソコンの画面上で測定用のプログラムを操作してサンプリング周波数、パルス発生間隔などを設定する。

A測線上で測定を行う。測定中、パソコンの画面には得られたデータが随時表示される。

B画面表示は移動距離を横軸に、深度を縦軸にとして反射波の強度に応じて表示し、結果として縞模様のレーダ反射図となる。なお、各媒体の電磁波の速度を下記の表に示す。

表3−3−1 電磁波の速度(MGS社内資料)

2 調査使用器材

1) 概要

 今回使用した地下レ−ダ装置は、スウェーデンのMala GeoScience ( マロ・ジオサイエンス) 社が製作したもので、型式はRAMAC/GPR である。本装置は、基本的な構造は他の地下レ−ダと同様であるが、パルス波を利用しているために、消費電力が少ないことから、小型・軽量で携帯性に優れているのが特徴である。

2) 装置の構成

 本装置はコントロ−ル・ユニット、発信機+アンテナ、受信機+アンテナ、ノ−トパソコンの4 個のユニットから構成されている。各ユニットは直流式バッテリ−で駆動し、光ファイバ−・ケ−ブルで接続されている。それぞれの役割は、次のとおりである。

・コントロ−ル・ユニット

 電磁波の発信、受信を制御するとともに測距輪または糸式エンコ−ダにより距離測定を行う。通常、背中に背負うことができる。

・発信機( 受信機) +アンテナ

 アンテナは探査目標深度と現地の測線状況( 平地か斜面か、平面か壁面かなど) により適宜選択する。現在、25、50、100 、200 、400MHzの5 種類があり、探査目標・深度により適当なものを選択している。一般的には、探査深度が浅いものほど高周波数を用いて高い解像度の画像を得られるようにし、深いものほど低周波数のアンテナを用いてより深い深度まで電磁波を浸透させている。

・ノ−トパソコン

 測定時にはコントロ−ル・ユニットから送られたデ−タは、専用ノ− トパソコンによりリアルタイムで処理されて、レ−ダ反射波としてディスプレ−で見ることができる。このデ−タは、ノ−トパソコンのハ−ド・ディスクに書き込まれ、後ほど各種の画像処理を行うことができる。

             図3−3−1 GPR装置模式図

3 ・解析方法  ・

 電磁波速度の推定にあたっては、調査地が道路であることから、表3−3−1を参考にほぼ平均的な値となる80m/μs を採用した。

 得られたデ−タは空中・地中の直接波、地下の境界面からの反射波、埋設物による解析波などの影響で、複雑なパタ−ンを示すことが多い。このためデ−タファイルに対し、各種フィルタ−を用いてノイズを除去するなどの画像処理を施す必要がある。

 ノイズを除去した画像は、既往資料などから調査地の地質状況に最適と思われる電磁波速度を推定して速度の補正を行う。

 得られた画像は縞模様の反射波であるが、一般に細い縞模様が密な場合は地質構造、太い縞模様が疎らにあるのは緩んだ部分とみなすことができる。また埋設物などは、上に凸の放物線状の曲線を描くことが多い。