(1)浅層反射法地震探査

調査方法

(1)反射法地震探査の原理

 a)地震探査の種類と特徴

 地震探査(あるいは弾性波探査)は直接法,屈折法,反射法の3つに大別される.

 直接法はボーリング孔などを利用して直接地下の地震波伝播速度を測定するもので,速度検層,地震波トモグラフィ等がこれに含まれる.これらは速度決定精度や分解能の点では優れているが,その探査深度はボーリング深度までで,あくまで点の情報であり,仮にトモグラフィを用いても広域な探査には向かない.

 屈折法は深度とともに速度が増加する場合に調査可能であり,速度決定精度の点においても優れている.しかし,その探査深度は十分ではなく,通常探査深度の10倍程度の測線長が必要となる.また層厚が十分でない場合にはその層は認識されず,したがって分解能はよくない.

 これに対し,反射法は探査深度,分解能のいずれの点においても優れているが,速度決定精度の点においてやや劣る.また探査機材や処理装置が電子技術に大きく依存していることから,費用面での負担が大きい.

 反射法地震探査は弾性波の地層境界面からの反射波を用いて,地下構造のイメージングを行なう技術であり,同時にS/N比(信号対雑音比)を向上させるための特殊な調査技術(受振器群設置,展開,共通反射点重合法)が必要となる.それらの原理の概要を以下に示す.

 b)原理の概要

 弾性波は均質媒質中では直進するが,弾性波伝播速度と媒質の密度との積である音響インピーダンスが異なる地層の境界面に到達すると,そこで図3−1−1に示すような反射・屈折現象が生じる.屈折した波はより深部の地層境界面でさらに反射・屈折を繰り返す.

 反射波は地層の境界面で反射して地表に戻ってきて,地表に設置された受振器と呼ばれる一種の地震計を利用すれば,地動に応じた電圧変化として波動の到達を記録することができる.反射法地震探査においては,このアナログ形の電圧値はディジタル変換され記録装置の磁気テープ上に一定のフォーマットで地震記録として記録される.地震記録には波動を人工的に地下に送り込んだ瞬間を基準とし,ある時間内に受振点に到達した波動が全て含まれている.

 図3−1−2に水平2層構造およびその場合に震源で発振し,各受振点に到達する各種の波動を模式的に示す.

 図3−1−3には実際に野外で観測された地震記録を示す.この図の縦軸は発震した瞬間からの時間であり,震源に近い位置にある受振点で観測された記録が山型につながる波の頂点に示され,順次震源から遠ざかる位置の受振点の記録が各両端に向かって並べられている.図には震源から受振点へ水平方向から直接到達する直接波,屈折波,反射波および表面波が含まれる.

 震源から反射点を通り受振点まで伝播する反射波の走時Teは,震源における垂直往復時をT0,地層の弾性波伝播速度を,V,震源から受振点までの距離であるオフセット距離をxとし,図3−1−4を参照すると,

       V2Te2 = V2T02 + x2 (2.1)

で表わされる双曲線の方程式で与えられる. 図3−1−3をみるとオフセット距離の増加とともに反射波の走時も大きくなっており,図3−1−2の地下構造の形を表していない.この記録に対しオフセット距離による走時の増加を補正し,図3−1−4に示す反射点の直上で発振して受振した零オフセット距離の記録を求めることにより,地下の構造形態に対応する記録を得ることができる.したがって,震源受振点を地表面上を移動させながら地震記録をとり,オフセット距離による走時の増加を補正し,また波動の伝播に伴う振幅の減衰を補正した後,発振時刻を基準として縦に連続的に並べることによって,時間断面と呼ばれる記録が作成される.さらに,データ処理の段階で得られる弾性波の速度情報を用いて縦軸の時間を深度に変換した深度断面を作成できる.

2 調査使用器材

反射法地震探査で使用する探査機材は,震源,収録装置,収録装置用発電機,受振器,送信用ケーブル等から構成される.

 a) スイープ震源

 一般に反射法地震探査で用いられる震源は,ダイナマイトや重錐落下等の衝撃あるいは打撃方式のパルス発生型震源であるが,いずれも打撃音や地表の損傷等を伴う.これに対して,いわゆる静かな震源としてバイブレータ方式がある.これはバイブレータを地面に圧着して震動させる方法であり,ごく弱い地震エネルギーを長時間(数秒〜数十秒)出力し,後にコンピュータ処理により瞬間のエネルギーに変換し,打撃型震源に匹敵する地震エネルギーを得ようとするものである.

 スイープ(sweep)には,一般に「引きずる」あるいは「進行する」の意味があり,ここでは,時間軸上で発振周波数を連続的に変化(進行)させるという意味で使用している.通常地震探査の震源としては,パルス型震源が望まれるが,そもそもパルスとはすべての周波数の波が時間t=0 のところで同位相の状態で重ね合わさったものである.したがって何らかの方法で広範囲にわたる周波数の波を発生することができれば,適当な数学的処理の後,よりパルス的な波を取り出すことが可能となる.

 このような観点から考案されたのが,スイープ波を利用したスイープ震源システムである.スイープ波は,一般には図3−1−5 に示されるように低い周波数から高い周波数へと連続的に変化する波を利用している.この波の周波数特性は図の右側に示してある.したがってこの波に含まれる各周波数の波を重ね合わせれば,パルス状の波を取り出すことが期待できる.実際の手続きとしては,図3−1−5(a) の自己相関を求めることによって実現できる.図3−1−5(a) 〜(d) は,スイープ波を用いたときに期待される反射波形と,それのパルス型波形への変換のようすを示したものである.(a)は震源波形(スイープ波),(b)は反射係数列であるとき,(c)のような反射波形が期待される.ここで(a)と(c)の相互相関を求めると(d)のようになり(パルス圧縮処理),通常の地震反射記録となる.

 今回用いたスイープ震源の概観を図3−1−6に示す.震源は自走式であり,発電機,電磁バイブレータ,パワーアンプ,波形制御装置が搭載されており,測定時には後部にある電磁バイブレータを地面に圧着してスイープ信号を地中に放射する.

震源部の模式図を図3−1−7に示す.震源の駆動部(電磁バイブレータ)はベースプレートに連結され,静止慣性力としてのリアクションマスに対する反力を地表面力として与える.またベースプレートを地面に圧着させるために,ホールドダウンマス(車体重量)をダンパーを介して接続している.

 震源部は,図3−1−8に示すようにパーソナルコンピュータ(トランスピュータを含む)によって制御される.リアクションマスおよびベースプレートに取付けた加速度計により両者の動きをモニターし,どちらかの加速度波形あるいは両者の重量比による重み付き和(起振力)がパーソナルコンピュータ上で作成した基準信号(パイロットスイープ)と同位相,同振幅で駆動するよう波形制御している.波形制御は,バイブレータの伝達関数から求めた逆フィルタを利用する方法を用いている.

b) 受 振 器

 受振器としては地表面における振動を測定するジオフォン(geophone)を用いた.ジオフォンは図3−1−9に示すようにスプリングで吊るされた振子に固定されているコイルと,地表面と同じ振動をする受振器のケースに固定された永久磁石からなるものである.受振器のケースが地動に応じて振動すると磁石と振子との間に地動に応じた相対運動が生じ,コイルに起電力が発生する.起電力は相対運動の速度に比例している.ジオフォンの周波数特性はスプリングの固有周波数f0,磁場および回路の抵抗から決まるダンピング定数hより決まる.

 今回使用したジオフォンはh=0.7 ,f0=30Hz であり,30Hzより高周波側に平坦な特性を持ち,それより低周波側では,−6dBの傾で減衰する(20Hzで振幅が1/2になる).受振器と地面との接地を良くするためにケースにはスパイクが取付けられている.

 c) 収 録 装 置

 記録装置は受振器でとらえられた地動に応じたアナログ電圧を増幅し,フィルタをかけた後,ディジタル値に変換して定められたフォーマットで磁気テープ上に記録するものである.今回使用した収録装置はジオメトリック社製のStrataView (60ch)1台であり,60ch分の同時収録ができるようにした.その構成の模式図を図3−1−10 に示す.

 受振器からの電圧信号は,直接受振器を装着するテイクアウトケーブルと中継線(いずれも60芯の同軸ケーブル)を用いて収録装置のプリアンプに接続される.

3 測定仕様

 探査作業時の機材配置の模式図を図3−1−11 に示す.また表3−1−1に調査数量および探査諸元を示す.

 探査方法は以下の通りである.

a)展  開

 A測線およびB測線では,オフセット距離を延ばし探査深度を深くするために終端発震展開を採用し,受振器間隔および発震間隔をそれぞれ5mとした.

 S波探査であるBS測線では,より浅部の構造を精密に調査するために振り分け展開を採用し,受振器間隔,発震間隔を狭めて2mとした.

 また収録は60チャンネルとした.

b)受振器とケーブルの設置

 受振器の設置は道路脇,歩道脇の側溝等を利用することとし,歩行の妨げにならないようにした.またケーブル等が車両侵入路を横断する場合は,ゴム製のケーブルガイドを使用し横断させた.

c)スイープ震源

 スイープ震源はゴムクローラ車に搭載された自走式である.したがって作業に当たっては震源車の前後に安全確認者を置き他の車両等の交通の妨げにならないようにした.

d)収録車

 収録器はワゴン車に搭載し,電源には2kwの小型発電機を使用した.作業時間外は宿泊先に移動をさせた.

e)現地テスト

 反射法地震探査の測定に先だって,地下の地質構造を最もよく捉えられるよう,地質条件把握・測定条件決定のためのテストを実施した.テスト内容は,反射波の信号が最も得られ易い最適スイープ周波数の検討と,他の雑振動ノイズを弱めるための垂直重合数の検討を行なうためのものである.

 現地テストの結果スイープ周波数はA,B測線では20Hz〜180Hz,BS測線では20Hz〜140Hzとした.またスイープ時間7秒,収録長8秒,垂直重合数を8回とした.

4 解析方法

 データ処理および解析の流れを図3−1−12 に示す.

 以下にそれぞれの概要を述べる.

a)パルス圧縮処理

 収録された地震探査データと,震源で用いたスイープ波形の相互相関処理を実施して,通常の地震探査記録に変換する様子はすでに図3−1−5に示してあるが,ここでは相互相関処理(パルス圧縮処理)について具体的に述べる.

相互相関処理の概念を図3−1−13 に示す.(a) は受振器で観測した波形,(b) を震源から送り出したスイープ波として,両者を並べる.このとき明らかに(a) は地層境界面から反射して地表に戻る時間Tの分だけ遅れている.この並べた状態で両者の積和を計算し,その結果を時間0の値とする.次に(b) を1サンプル分右(Δt ,時間の大きい方)に動かし,互いに向き合った状態での積和を計算し,その結果を時間Δt の値とする.同様にして(b) を2Δt,3Δt,…と動かしていくと,(b) の先頭がTに来たときその積和の絶対値が最大となり,さらに右に動かしていくと積和は再び減少していく.この積和の値を動かした時間順にならべた結果を相関波形といい,ここでは地震記録に対応する.この操作を全ての受振器の記録について行なう.

b)データ編集

 個々の地震探査記録の内容を調べ,不良反射記録の発見およびエラーの修正・除去等を行う.また各データにオフセット,杭番号の情報を登録する(ジオメトリの定義).

c)共通反射点編集

 ここでは受振器およ び震源の幾何学的配置の関係と,共通反射点記録の編集方法を示す。また図3−1−14 にの模式を示す.

 ある震源と受振点の間の反射点はその中点に位置する.したがって反射点の間隔は受振点の間隔の1/2となる.下の図で展開が順次紙面の右方向に移動する場合,同時に反射点も右方向に移動する.このとき↓で結ばれた反射点は同一点となり,すなわち共通反射点となる.またその点に対応する受振点記録を集めれば共通反射点記録群となる.

       

d)静 補 正

 各受振器およびそれぞれの震源の高度差あるいは直下の低速度の表層(盛土等)の厚さは,図3−1−15に示すように地震記録上で反射波の出現時間に微妙な時間ずれを発生させる.したがって,各受振器で得られた屈折法における波形の初動走時を用いて,高度差と表層の遅れ走時分の到達時間補正を行う.今回の探査では初動走時から屈折法の解析を適用して表層の厚さを求めた.

 解析では,震源および受振点は一定の基準面上に位置していると仮定することから,表層分をその下の速度層で埋め直し,さらに高度分の違いをやはり同様の速度層で埋め直したものと仮定して時間を補正する.

e)振幅減衰回復

 地震探査記録に含まれる幾何減衰の影響を取り除くための振幅補正を施す.一般に震源は点と見なせるが,そこから放射された地震波は四方八方へと伝播しながら,その距離に反比例して減衰する(幾何減衰).反射波も同様に震源−反射面−受振器間の距離に反比例して減衰する.したがってこの伝播距離による減衰分を補正して,深い地層境界面からの反射波を浅い部分からの反射波と同様な振幅に持ち上げる.

f)ディコンボリューション

 反射記録の中に含まれる繰り返し性のある信号を取り除く処理である.繰り返し性を示す信号の原因として図3−1−17(a)に典型的な例を示す.海上探査の場合には地震波(音波)が海面とその直下の境界面の間で何回も繰り返し反射して,多重反射と呼ばれる反射波が幾重にも現われる.また別な原因としては,震源そのものが繰り返し性を持つ場合である.例えば空気膨張を利用するエアガンでは,圧縮空気の急激な解放によって,その音波エネルギーを放射するが,膨張した空気はつぎの瞬間海水の圧力によって急激に収縮する.このとき受振器では最初に感じた正の圧力に対して,負の圧力を感じることになる.このようなことが振幅を減少させながら数回繰り返される.

 以上述べたような現象は,陸上の場合でも極く表層の低速度な層によって起こることもある.これら繰り返し性の波は,記録上でしばしば真の反射波の信号を見にくくしたり,弱めたりする.

 繰り返し性を示す記録のスペクトルは模式的に示すと図3−1−17(b)のようになり,それぞれの繰り返しの周波数やあるいはその2倍,3倍,…の周波数でピークを示す.したがってディコンボリューションとは,これらのピークを示す振幅を抑さえて,全体のスペクトルがほぼ平坦となるようにする処理である.

g) 周波数フィルタ−

 地震記録に含まれる反射信号以外の信号を取り除くために、周波数フィルタ−を通過させる。周波数フィルタ−には図3−1−18 に示すように、ロ−パスフィルタ−( 低域通過) 、ハイパスフィルタ−( 高域通過) 、バンドパスフィルタ−( 帯域通過) 、ノッチフィルタ−( 特定周波数遮断) 等がある。ノッチフィルタ−は高圧線等に起因する電源ノイズのみをカットするために使用される。低周波のノイズとしては表面波の他に遠方からの交通ノイズ、風等による木立の振動等がある。また、高周波ノイズとしては音、あるいは使用機材の電子回路ノイズ等がある。

h)速度フィルタ(F−Kフィルタ)

 図3−1−3に示した反射記録例のように,反射波以外に直接波や屈折波あるいは表面波等の波群が現われる.とくに表面波は低周波数で振幅が大きく,震源に近い部分では反射波と重なってしまうためノイズとして扱われる.このようすを図3−1−19 に示す.しかしこのような表面波の伝播速度は遅く,記録上では一定の傾を持つ波群となる.このような一定速度の傾を持つ波群を除去,あるいは取り出すフィルタを速度フィルタという.

 速度フィルタの中で最も一般的なのがF−Kフィルタである.ここでFは時間軸に対する周波数で,1/周期(1/時間)で定義され,Kは距離軸に対する周波数(波数)で,1/波長(1/距離)である.反射記録について,横軸が距離,縦軸を時間として,最初に縦軸に沿って全ての受振点記録をそれぞれ周波数変換(振幅および位相スペクトルに変換)する.このようにして得られた各記録に対応するスペクトルを並べて,これを横軸方向に波数変換する.この結果縦軸が周波数(F),横軸が波数(K)のグラフができる.もし表面波の卓越周波数が50Hzで,その速度が100m/sとすれば,波長が2m(100/50)となるので,F−Kグラフ上では縦軸が50Hz,横軸で0.5cycle/m(1/2m)のところで大きな振幅スペクトルを示す.したがって,この部分のスペクトル振幅を取り除いて,再び逆の変換,すなわち波数を距離に,周波数を時間にという手続きで変換すれば,表面波を取り除いた反射記録が得られる.

i)速度解析

 NMO補正に必要な地震波速度(重合速度)をもとめることを,速度解析という.速度解析の方法としては定速度走査法(Constant Velocity Scan)と定速度重合法(Constant Velocity Stack)が代表的である.基本的にはともに,さまざまな重合速度でNMO補正と共通反射点重合(図3−1−21(b)の右側)をほどこし,それらの効果を比較することにより,最適な重合速度を垂直走時の関数として選んでいく.定速度走査法では,ひとつのCDP記録に対して,定速度重合法はいくつかの連続したCDP記録に対して,その効果をみる.図3−1−20 にNMO補正に対する速度の影響を模式的に示す.速度が小さいと補正しすぎとなり,大きいと補正不足となる.

j)NMO補正

 図3−1−21 (a) は共通反射点記録(CDP )中の各波形での反射波が,発震点と受振点間のオフセット距離(震源距離)が大きいほど遅れて到達する様子を示している.これら走時のオフセットがゼロ,すなわち発震点と受振点が同一位置にある場合の走時(垂直走時)にたいする遅れをNMO(Normal Moveout)といい,この遅れぶんを補正して,図3−1−21(b)のように各波形をあたかもオフセットがゼロの記録になるようにする操作をNMO補正という.

k)共通反射点重合

 NMO補正した地震記録を反射点毎に足し合わせ1つの地震記録にする.これにより地震記録のランダムなノイズ成分は相殺されて弱まり,逆に同一時間に現われる反射信号は重合されて強まり,信号対雑音比(S/N比)が向上する.

l)残留静補正

 NMO補正後の記録について同一反射波の走時がさらに一致するように,また重合断面上の反射位相の連続性が向上するように,再度静補正を実施し共通反射点重合を繰り返す.

m)マイグレーション処理

 重合記録断面は,発震点と受振点が一致するゼロオフセットの記録をならべたものであり,その縦軸は時間である.反射波は,地表から反射面に垂直に入射して再び地表にもどってくるまでの往復走時に対応する時間のところに表示される.このため斜め方向から反射してきた波も各波形の直下に表示され,結果として記録断面上の反射面の位置や傾きは地下の実際の反射面のものとことなってくる(図3−1−22). 真の地下構造をあらわすためには,反射面の位置などを移動させて,実際の傾斜および位置を復元する必要がある.これがマイグレーション処理である.一般に地質構造が大きく変化する部分では,弾性波の散乱や回折現象が著しく,明瞭な反射波や屈折波を観測することは困難である.図3−1−23 に向斜構造がある場合の理論反射記録断面を示す.図の最上段は構造モデル,中段は反射断面(重合断面),下段はマイグレーション処理の結果である.

 これによると中段の反射断面では向斜構造部分の波動の散乱が著しく,さらに向斜軸および向斜翼からの回折波が顕著で,構造モデルの形を正しく知ることができない.ただしこの計算では波動の吸収減衰の効果を考慮していないので,実際の記録では回折波の尾は向斜構造近傍のみに限られる.中段の反射断面にマイグレーション処理を施すことによってようやく向斜構造の型が現われる.

n)AGC(自動振幅制御)

 反射位相の強弱を自動的に補正し,強い反射波をやや弱め,弱い反射波を強め,地層境界面の連続性を見やすくする処理である.

o)深度変換処理

 以上の各処理を行って得られる記録は,地面から各地層の境界面までの弾性波の伝搬時間に対応した時間断面である.これに速度解析で得られた各地層の弾性波伝搬速度や,ボーリングによるPS速度検層などによる伝搬速度などを用いることで,時間断面から深度断面への変換をおこなう.