・矢場A地区
@基盤深度は調査地区北側で高く、南側で低くなる(断層変位による可能性)。
A調査地区全般にほぼ水平に認められるATテフラ層が、北側で出現深度に変化がみられ、たわんでいると推定される(断層変位による変形の可能性)。
BBPテフラ層は、調査地区全体である程度の層厚変化が認められ、ATテフラ層に変位のない、南側区域では、1m程度と一定の層厚を示すのに対し、ATテフラ層に変位のある北側区域では数10p厚に減少する(断層変位に伴う地塊の上昇部位に生じた差別浸食の可能性)。
・矢場B地区
@調査地区全体で、ほぼ基盤深度は一定である(ボーリング調査結果を考慮すると、断層は調査地区より北側にある可能性がある)。
Aトレンチ調査において、BPテフラ層を含む層(C層)の一部が、堆積構造が乱れている(断層に近い地点であり、イベントに伴う崩壊の可能性がある)。
BBPテフラ層を含むC層以外に堆積構造の乱れは認められない。
以上より、矢場A地区の結果に着目すると、ATが降灰し、BPテフラ層が断層変位によって変形している可能性があると考えられる。
その考え方に従えば、イベントの起こった時期としては、ATが降灰し、BPテフラ層堆積中〜堆積後の可能性が高いと考えられる。また、矢場B地区のAの成果は、地層(C層)の崩壊がBPテフラ層堆積中〜後(約1.5〜2.0万年前)に生じたことを表している。これら矢場A、B地区で判明したAT及びBPテフラを含む層のたわみ、堆積構造の乱れは、同一断層の活動に伴う可能性が高く、よって最終活動時期は、1.5〜2.0万年前程度と推定される。この仮説によって、断層に起因した地震動による崩壊として、整合的に説明できる。図5−1−1に神川断層調査結果の模式図を示す。
ただし、ボーリング調査によって認められた,AT及びBPテフラ層の変形は、変形を直接示しているものではなく、当時の地形を反映している可能性もある。その考え方に従えば、最終活動時期が今回の仮説以前(2.0万年前より以前)であることになる。これについては、今後神川断層の延長部及び関東北西縁断層帯の調査の進捗によって、仮説の検証及びその確度について検討することが必要であると思われる。
表5−1−2 神川断層の調査地区別結果一覧