(1)保美地区露頭調査(研究)

図4−2−1

平井断層の通過地点と推定される保美地区で、農道工事及び河道の切り替え工事が行われた。それに伴って、平井断層と考えられる断層が出現した。断層露頭は、ふるさと農道の切り土法面で確認されたほか、三名川河道切替法面でも、認められた。以上2地点について調査、検討を行った。

1)ふるさと農道切り土法面部分の露頭(図4−2−2−1図4−2−2−2)では、新第三紀層の泥岩〜シルト岩層と第四紀の段丘砂礫層が、80度程度のシルト層の構造に調和的な広角度、逆断層関係で接している。そのため切り土法面では見かけ上、シルト岩層が段丘砂礫層に乗り上げているように見える。断層は明瞭で、数o〜数cmの断層粘土を挟んでいる。露頭区分の一覧を示す。

表4−2−2 農道切土部分の岩相(下位(古い方)から順に示す)

以下詳細を、下位から順に示す。

T:泥岩〜シルト岩層は、全体的に亀裂が認められるが、特に断層付近では著しく、かなり破砕されている。亀裂の走向はN35゜〜60゜程度、傾斜は50゜〜70゜程度のものが多い。また、断層及び地質構造に調和的な亀裂(数cm厚の破砕帯を伴う)が認められ、副断層を形成する。亀裂面には、鏡肌が認められる。

U:段丘砂礫層は、結晶片岩を主体とし、かなり礫の風化が著しい。礫径はφ=10〜250o程度で、亜角礫〜亜円礫である。また、礫は断層面に沿うように、長軸方向を下に向けているものが多い。全体的に淘汰悪く、雑然としている。

V:段丘砂礫層の南側に認められるローム層は、段丘砂礫層と不規則な接触を示しており、風化した片岩礫も含まれている。また、構造も認められないが、段丘砂礫層との不整合面に沿う形で片岩礫が配列する。テフラ分析によると、ATテフラが認められず、また、同一段丘面上にはBPテフラ層が確認されている。そのため、少なくともこのローム層の形成年代は、2.5万年前よりも古いと言える。

断層はN39゜W83゜Eの走向傾斜を示し、泥岩の構造に調和的である。断層面には2〜5o程度の粘土を挟む。

2)三名川河道切替工法面の掘削基面付近の下部法面(図4−2−3)では、段丘砂礫層と基盤の泥岩〜シルト岩層が70度程度の高角度、逆断層関係で接している状況が認められる。断層部の砂礫層は断層に沿ってほぼ直立している。岩相は大きく分けて、基盤の新第三紀層の泥岩とその上位の段丘砂礫層に区分される。

表4−2−3 三名川河道切替工法面の掘削基面付近の岩相区分(下位“古い方”から順に示す)

詳細は以下に示す。

T:泥岩は、青灰色を呈し、塊状で構造等は認められない。断層付近では亀裂が発達し、破砕質である。

U:段丘砂礫層は、結晶片岩を主体とし、かなり礫の風化が著しい。礫径はφ=10〜250o程度で、亜角礫〜亜円礫である。また、礫は長辺を断層面に沿うように配列する。基質はやや酸化しており、しまっている。

3)小段上の上部法面(切替河道掘削基底面から4〜5m程度上位、図4−2−4)では、断層は見かけ上、ほぼ垂直に認められる。また、断層面に粘土等は認められず、礫層中を通過している。岩相によって、大きく4層程度に区分される。下位(古い方)から順に示す。

表4−2−4 小段上の上部法面部分での岩相区分(下位(古い方)から順に示す)

詳細は以下に示す。

T:最下位の段丘砂礫層。2)の掘削基底面での“U”の段丘砂礫層に対比される。ほぼ水平の堆積構造をなすが、断層付近では礫の配列等が大きく乱され、かなり変位を受けている様子が認められる。礫種は片岩を主体とし、形状は亜角礫〜亜円礫で、φ=20〜300o程度である。基質は中粒砂を主体とし、赤く酸化し固結している。

U:その上位のシルト質細粒砂〜シルト層。黄灰色〜茶褐色を呈す。シルト層は、φ=20〜40o程度、角〜亜角礫の片岩礫を多く含む。礫の配列には規則性は認められない。また、全体的には無構造であるが、断層を挟んでシルト層がずりあげられている様子が確認される。

V:シルト層の直上に位置する段丘砂礫層。礫は片岩主体で構成され、最大礫径は25cm程度で、平均5〜10cm程度である。シルト層に沿うように礫が再配列しており、断層による変位を受けているように認められる。

W:全体を覆うように堆積する砂礫層。水平堆積構造をなしており、全体を緩やかに覆う。礫は結晶片岩から構成され、最大30cm、平均では5〜10cm程度である。また、基質はゆるく、未固結である。

断層部分より東側は、新しい砂礫層によって削られており、断層によって変位を受けている地層に対応する部分は認められない(図4−2−12参照)。そのため、変形を受けているのが確実なシルト層の直接の対比は困難である。しかし、100mほど東側で、ほぼ同じような層相を示すシルト層が、変形している部分から約2m程度、高い位置で確認される(図4−2−12写真4−2参照)。

さらに高位標高の最上部法面では、BPテフラ層とATテフラ層が確認された。しかし、上記のような新しい砂礫層による削り込みと、テフラ層そのもののが連続性に乏しいため、BP及びATテフラ層が、断層により直接変形しているかどうかについては、確認することができない。