本調査の最終的な目的は、トレンチにより、活断層の活動周期及び最終イベントを決めることである。このためにはトレンチ地点の地層の層序及び年代の決定が不可欠である。テフラの分析はこの年代決定の一つの手段として行うものである。テフラは瞬時性、広域性という特質があるため、古くから地層の対比に使われてきた。近年テフラを用いた編年法すなわちテフロクロノロジーが発達し、ローカルなテフラと広域テフラとの対比及び層序の決定がされ、広域テフラはもとより、ローカルなテフラの絶対年代が推定できるようになっている。本調査地域では、広域テフラ及びローカルなテフラが多数見られ、テフラの分析によるテフラの同定は、調査地域さらにはトレンチ地点付近の地層の年代決定には極めて有効である。
方法
目的で述べたようにテフラ分析の目的はテフラ同定により絶対年代を決定することである。テフラの同定には通常、層序学的方法と岩石記載学的方法が必要である。前者は野外調査による記載、後者は室内分析のことである。本調査では層序学的方法として、ボーリング及びオーガーコアによる層位、層相の記載を行い、岩石記載学的方法として岩石レベルではテフラの組織の観察、鉱物レベルでは形態の観察及び屈折率の測定を行った。
具体的には、ボーリング及びオーガーコアからテフラと非テフラを識別し、層序学的方法として柱状図の作成により、テフラの層序の確立、層厚、粒度、色調、降下ユニット、風化度、発泡度の観察を行った。また、岩石記載学的方法としては、ボーリング及びオーガーコアからテフラのサンプリングを行い、サンプリングした分析テフラの洗浄後、岩石レベルでは発泡様式、重鉱物組成の相対量比の記載を行い、鉱物レベルでは火山ガラスの形、色の記載、屈折率に関しては火山ガラス、輝石、角閃石の測定を行った。また、鉱物レベルのテフラの同定に関して、火山ガラスの形はバブルウオール型、軽石型に分類した。最終的に、層序学的結果と岩石記載学的結果を組み合わせることにより、テフラの類似種を減少させ特定テフラ分析の精度を高めた。