(1)新規の活動について

今回の調査では直接的な地震イベントは確認できなかったが,新規の活動性に関する以下の間接的な情報を得ている。ひとつは,T2トレンチでみられた液状化で,もうひとつは,中垣外地点の低断層崖である。

T2トレンチで認められた液状化の現象が手賀野断層の活動によるものであるという確証は無いが,当初想定された断層通過位置付近で認められることから,その可能性はあるものと判断される。液状化の時期については,液状化層に貫かれるB3−2層基底部(北東壁のTD=12.6〜13.5m)の腐植土層の14C年代値は7390±50yBP(T2C2)を示し,液状化層を覆うC2−1層基底部(南西壁のTD=13.5〜14.4m)の腐植土層の14C年代値は5350±50yBP(T2C3)を示す。したがって,液状化の時期は5400年前から7400年前の間であると判断される。

トレンチ調査を実施した中垣外地点ではF4面が広く分布し,F4面はF4−1面〜F4−5面に細分される。手賀野断層による鉛直変位量はF4−1面(形成時期不明)で4.5〜5.0m,F4−2面(2〜2.5万年前)で約3m,F4−3面(形成時期不明)で1.5〜2.5m,F4−4面(約7000年前)で約1mで,F4−5面(約1000年前)には変位がない。F4−3面については,T3トレンチの結果から現地形で認められる段差は断層変位を直接反映したものではないことがわかったが,図3−1−6−12に示すように,人工改変前の撓曲的な比高は1.5〜2.5m想定される。また,F4−5面についてはT1トレンチの結果から現地形で認められる段差は断層変位を反映したものではないことがわかったことによる。

地形面分布から,断層の上盤側は地震イベントによる隆起と開析を繰り返していると推定され,断層の下盤側は地震イベントによる沈降と埋積を繰り返していると推定される。断層上盤側の地形面の開析が地震イベントによる隆起の結果生じたものであるとするならば,中垣外地点では4回のイベントが地形面に記録されていることになる。