大草地点では,fd0層は新第三系鮮新統とされる土岐砂礫層(例えば山下ほか編:1988)を不整合で覆い,約8万年のfdV層に不整合で覆われる。fd0層の層相はクサリ礫を多く含む非常に締まった砂礫層で,fd0層に対応する地形面は認められない。fd0層中に堆積時期を示す試料は得られなかったが,上記事象からfd0層は更新世前期〜中期の堆積物であると推定した。
大草地点に分布するfdV(2)層はF3(2)面の構成層である。火山灰分析結果から,本層の再堆積物であるとみられる層準の一部にDNPが多く含まれることが確認された。間接的ではあるが,fdV(2)層中もしくはfdV(2)層を覆う地層中にDNPが含まれる可能性が高く,fdV(2)層の形成時期は8万年以前であると推定できる。
鍋山地点に分布するfd0層は大草地点と同様の層相・地質層序的な特徴を有することから,鍋山地点のfd0層も更新世前期〜中期の堆積物であると推定した。
中垣外南東地点において平成11年度の調査では,大草地点や鍋山地点に分布するfd0層に相当する「クサリ礫化した砂礫層」をfd1層として取り扱い,F1面に対応する堆積物であるとしていた。中垣外南東地点において,「クサリ礫化した砂礫層」がF1面構成層であるか否かという点と,土岐砂礫層との層序関係について検討・確認はしていないが,層相的な類似性から当地点の「クサリ礫化した砂礫層」をfd0層に対比する。当地点のfd0層は大草地点や鍋山地点と同様に更新世前期〜中期の堆積物であると推定される。
中垣外南東地点では,fdX層中に挟在する腐植土の14C年代測定を実施した。fdX層に挟在する腐植土の14C年代測定値は3560±90yBP,3480±70yBPおよび2970±120yBPを示す。fdX層の堆積時期はおおよそ3000年前といえる。
表3−2−4−1 土石流堆積物の堆積時期