(3)段丘面と土石流堆積面の形成時期

手賀野断層周辺に分布する段丘面や土石流堆積面について14C年代測定,火山灰分析および地質層序などから,形成時期を推定した。(表3−1−6−2

深沢地点のM1面については,火山灰分析からM1面構成層上部にK−Tzを含む層準を確認した。K−Tzの噴出時期は7.5−9.5万年前とされており(町田・新井[1992]火山灰アトラス,東京大学出版会),M1面の形成時期は7.5〜9.5万年前であると推定される。

手賀野〜駒場地点に分布するM3面は,従来手賀野面として記載され(木曽:1959,吉川:1961など),木曽川泥流堆積物(中村ほか:1992により約5万年前)が覆うことから木曽川本流の「高部面相当の段丘」(吉川:1961,桑原:1973など)とされていた。本調査では駒場地点の地表踏査(精査)を行い,M3面は木曽川泥流堆積物を開析して分布することを確認した。したがって,平成11年度の調査でM3とした段丘面は5万年より新しい地形面であり,低位段丘面に相当すると考えられることから,L1面に変更する。L1面の形成時期は5万年以降である。

トレンチ調査を実施した中垣外地点ではF4面が分布し,F4面はF4−1面〜F4−5面に区分できる。トレンチで出現した地層とこれらの地形面との関係は,F4−2面構成層がT層,F4−3面構成層がU層,F4−4面構成層がV層,F4−5面構成層がW層とX層に相当するものと判断される(3−1−6[2].トレンチ調査地点の地形地質解析)。T1トレンチのT層中にAT火山灰層が含まれることから,F4−2面の形成時期を2.0〜2.5万年前と推定した。T2トレンチのV層中に含まれる腐植土の14C年代値が7240±50yBPであることから,F4−4面の形成時期を約7000年前と推定した。T1およびT2トレンチのW層上部とX層上部に含まれる腐植土の14C年代値がそれぞれ1240±70yBPと2320±40yBPを示すことから,F4−5面の形成時期を1000〜2000年前と推定した。ただしトレンチ調査地点では,各地形面形成時の浸食作用があまり強くないので,各地形面間の比高が低く,境界はあまり明瞭ではない。そのため,地形面の認定の精度はやや低く,トレンチで出現する地層との対比の確度はやや低い。

表3−1−6−2 段丘面と土石流堆積面の形成時期