(1)変位地形の分布と形態

空中写真図化により地形図を作成した中津川市深沢〜中垣外区間で,図化した地形図を基に地形面区分と手賀野断層の分布および形態の判読(図3−1−6−1図3−1−6−2図3−1−6−4)を行うとともに,地形図から地形断面図を作成して段丘面や土石流堆積面の手賀野断層による変位量(図3−1−6−3図3−1−6−5図3−1−6−6図3−1−6−7)を求めた。

図3−1−6−1に示す範囲の手賀野断層はほぼ一連の断層として判読でき,南西では2条に分岐する。手賀野断層によるH1面とM1面およびF4面の鉛直変位量は,それぞれ約26m,約12m,4〜5mと見積もられる(図3−1−6−3)。手賀野断層はH1面とM1面付近で沈降側(北西)に向かって凸な弧状の形態となり,低角逆断層であることを示す(図3−1−6−2)。

トレンチ調査地点の周辺ではF4面が分布する。茄子川や坂本川の氾濫やF4面中の小河川による開析でF4面には複数の亜段が発達し,F4面は上位の地形面からF4−1面〜F4−5面に細区分される(図3−1−6−4)。手賀野断層は図3−1−6−4の範囲の北東端のM1面や西半部のF4−1,F4−2およびF4−3面では明瞭な断層崖として認められるが,中央〜北東のF4−3およびF4−5面では撓曲崖的な形態を示しやや不明瞭である。変位地形はF4−1面,F4−2面,F4−3面,F4−4面で,低断層崖や撓曲崖として認定でき,F4−5面に変位地形はない。図3−1−6−5図3−1−6−6および図3−1−6−7に手賀野断層を横断する地形断面図を示す。手賀野断層による鉛直変位量はF4−1面で4.5〜5.0m(図3−1−6−7のTNG−7測線),F4−2面で約3.0m(図3−1−6−7のTNG−6測線),F4−3面で1.5〜2.5m(図3−1−6−5のTNG−2測線),F4−4面で約1.0m(図3−1−6−6のTNG−5測線)である。TNG−5測線とTNG−6測線およびTNG−7測線については,断層の沈降側に変位基準面を浸食・埋積して新規の堆積物(F4−5面構成層)が分布しているため,変位量はやや大きめの値である可能性がある。表3−1−6−1に空中写真図化から作成した復元地形図に基づいて推定した手賀野断層の鉛直変位量を示す。

表3−1−6−1 手賀野断層の鉛直変位量一覧表