(a)トレンチ法面の地質
T2トレンチには主に砂礫層からなる土石流堆積層が分布し,下位からA層,B層およびC層に区分される。B層はA層を不整合で覆い,C層はA層とB層を不整合で覆う。A層は礫含有率の高い礫層からなる。B層はシルト層や砂層および砂礫層からなり,B1層〜B4層に4区分される。主にシルトからなるB1層には液状化が認められ,液状化によるシルト脈はB2層とB3層およびB4層を貫きC層に覆われる。C層はC1層〜C7層に7区分される。C層下部(C1層,C2層,C3層)は砂礫主体で,C層上部(C4層,C5層,C6層,C7層)は砂および腐植土主体の層相である。B3層は14C年代測定から7390±50yBPの年代値が得られた。C層は14C年代測定から5350±50yBPと2400±60yBPおよび2320±40yBPの年代値が得られた。
T2トレンチでは断層は出現しなかったが,強震現象とみられる液状化が認められた。液状化によるシルト脈がB3層を貫きC層に覆われることから,液状化の時期は7390±50yBPから5350±50yBPの間である。(図3−1−4−4)
@A層:礫層(礫含有率高い.締まっている)
トレンチ起点側(北東壁のTD=2.5〜11m,南西壁のTD=3〜11.5m)およびトレンチ終点側(北東壁のTD=25〜30.5m,南西壁のTD=26〜31m)に分布する。A層はB層およびC層に覆われる。
本層は亜円礫および亜角礫を主体とする礫層からなる。礫平均径5〜10cmで概ね揃っており,礫含有率は80%程度と高い。マトリックスはシルト混じり粗粒砂で,浅黄(5Y 7/3,2.5Y 7/3)やにぶい黄(2.5Y 6/3)およびオリーブ黄(5Y 6/3)を呈する。締まりが良い。
AB1層:シルトおよび砂層(液状化層)
トレンチ中央部(北東壁のTD=13.7〜15.6m,南西壁のTD=12.8〜13.8m)およびトレンチ終点側(北東壁のTD=22.1〜24.6m)に分布する。
本層は砂質シルトとシルト質砂および中粒〜細粒砂からなる。砂質シルトとシルト質砂は灰オリーブ(5Y 5/2,7.5Y 5/2)やオリーブ灰(5GY 5/1)を呈し,酸化部では明黄褐(2.5Y 6/6,2.5Y 6/8)を呈する。中粒〜細粒砂は灰(7.5Y 5/1,10Y 5/1)を呈する。
本層は,脈として上位層を貫いたり,C層堆積前の旧地表面を覆う様相を呈しており,液状化によるものと判断される。
本層はB2層とB3層およびB4層を貫き,C1層に覆われる。液状化による脈状や噴出相はみられるが,本層の初生的な堆積相は出現しない。
BB2層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂)
トレンチ中央部〜終点側にかけて(北東壁のTD=9.5〜26m,南西壁のTD=10〜28m)分布する。A層を覆い,B3層とB4層とC1層およびC2層に覆われる。また液状化したB1層に貫かれる。
本層は礫平均径5〜15cmの亜角礫および角礫からなる砂礫層である。マトリックスは極粗粒砂からなる。にぶい黄褐(10YR 5/3,10YR 5/4)や黄褐(10YR 5/6)や暗褐(10YR 3/3)を呈し,酸化部は赤褐色(5YR 4/6,5YR 4/8,2.5YR 4/8)を呈する。
CB3層:砂層および砂礫層(中粒砂.葉理発達,14C年代:7390±50yBP[T2C2])
トレンチ中央部付近(北東壁のTD=12〜20m,南西壁のTD=11.5〜14.5m)に分布する。B2層を覆い,B4層に覆われる。また液状化したB1層に貫かれる。
本層は砂を主体とし,砂礫層を伴う。砂は主に中粒砂からなり,粗粒砂と極粗粒砂と砂質シルトおよび細粒砂を含む。層理や葉理が発達し,緩く北西に傾斜する。中粒砂や粗粒砂は黄褐(2.5Y 5/3,2.5Y 5/4,2.5Y 5/6)や灰オリーブ(5Y 5/2)を呈し,砂質シルトや細粒砂は灰(5Y 5/1,5Y6/1)や灰オリーブ(7.5Y 5/2)を呈する。
DB4層:砂礫および礫混じり砂層(マトリックス極粗粒砂)
トレンチ中央部付近(北東壁のTD=11.5〜16m,南西壁のTD=11.5〜16m)に分布する。液状化したB1層は本層中にブロック状に断続的に分布するほか,噴出相として本層を覆う。
本層は亜角礫および角礫主体の砂礫層で亜円礫を伴う。礫は平均径3〜10cmで,最大径は35cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が主体で花崗岩礫や美濃帯堆積岩礫を伴う。マトリックスは極粗粒砂で灰黄(2.5Y 6/2)や灰オリーブ(5Y 5/2)および灰色(7.5Y 6/1,7.5Y 5/1)を呈する。
EC1層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂.酸化顕著)
トレンチ起点側(北東壁のTD=1〜11m,南西壁のTD=2〜12m)でA層とB層を不整合に覆って分布する。C2層やC3層およびC4層に覆われる。
本層は礫径10〜25cmの亜角礫および角礫からなる砂礫層である。マトリックスは細礫を含む極粗粒砂からなる。全体に酸化しており,にぶい赤褐(5YR 4/3)やにぶい黄褐(10YR 5/4)を呈する。
FC2層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂,14C年代:5350±50yBP[T2C3])
トレンチ起点付近を除きほぼトレンチ全区間(北東壁のTD=6.5〜32m,南西壁の5〜32m)に分布する。A層とB層及びC1層を覆い,C3層とC4層とC5層およびC7層に覆われる。
本層は礫径5〜15cmの亜円礫〜亜角礫を主体とする砂礫層からなる。マトリックスは極粗粒砂および粗粒砂で,黄褐(2.5YR 5/3)やにぶい黄褐(10YR 5/2)を呈する。礫の配列は不規則であることが多いが,一部の礫の配列や礫径の違いおよび礫含有率が異なる堆積層の境界面の傾斜は概ね現地形に沿って緩く北西に傾斜している。
GC3層:砂礫層(マトリックス暗褐色粗粒砂)
トレンチ終点付近(北東壁のTD=17〜33m,南西壁のTD=23〜28m)に分布するほか,トレンチ起点付近(北東壁の1〜2m,南東壁の1m付近)に小分布する。TD=24〜28mではC2層を浸食埋積した流路跡がみられる。
本層は礫径5〜20cmの亜角礫を主体とする砂礫層からなる。マトリックスは褐(10YR 4/6)の粗粒砂および極粗粒砂で,細粒砂や細礫を含む。
HC4層:砂礫層(マトリックス腐植質,14C年代:2320±40yBP[T2C4])
北東壁のTD=0.5〜31.5mと南東壁のTD=0〜6mおよび南西壁のTD=0.5〜2.5mに層厚20〜50cmでほぼ層状に分布するほか,南西壁のTD=15〜31mでは断続的に分布する。C1層とC2層およびC3層を覆い,C5層とC6層およびC7層に覆われる。一部でC5層を覆うほか,C5層やC7層と指交することもある。
本層は礫径2〜10cmの亜角礫を含む砂礫層で,マトリックスは腐植質細粒〜中粒砂および腐植質な砂質シルトからなる。黒褐(10YR 2/2,10YR3/1)および暗褐(10YR 3/3)を呈する。
IC5層:礫混じり砂層(礫混じり砂,砂およびシルト.砂は細粒〜中粒砂)
北東壁のTD=22.5〜31mに20cm程度の層厚でほぼ層状に分布し,C4層を覆いC6層に覆われる。南東壁ではTD=2〜5.5mとTD=15〜19mおよびTD=25.5〜29.5mに断続的に分布し,C4層とほぼ指交してC7層に覆われる。
本層は礫径2〜5cmの礫を含む礫混じり砂を主体とし,砂や砂礫および砂質シルトを伴う。砂は細粒砂および中粒砂からなり,にぶい黄(2.5Y 6/4)や浅黄(5Y 7/3)を呈する。砂質シルトは明オリーブ灰(5GY 7/1)を呈する。
JC6層:腐植土層(14C年代:2400±60yBP[T2C1])
北東壁では起点から終点(TD=1〜32m)にかけてほぼ連続的に分布する。南西壁ではトレンチ終点付近(TD=21.5〜26.5m)に分布する。C3層とC4層およびC5層を覆う。C7層とは指交関係にある(北東壁のTD=23m付近や南西壁のTD=26.5m付近)。
本層は黒(10YR 2/1)や黒褐(10YR 2/2)を呈する腐植土からなり,砂やシルト粒子を含む。
KC7層:砂層
南西壁ではトレンチに出現する地層中の最上位に層厚60〜100cmでほぼ連続して分布する(TD=1〜20.5m,26〜34.5m)。北東壁では終点付近(TD=32〜34m)に小分布する。C2層とC3層とC4とC5層を覆い,C6層とは指交関係にある。一部C4層とも指交する。
本層は細粒や中粒および粗粒の砂からなる。礫径1cm程度の礫を混入することがある。色調はにぶい黄(2.5Y 6/4)や浅黄(2.5Y 7/4)や明黄褐(10YR 5/6)を呈する。北東壁の終点付近と南西壁の起点付近では堆積構造が認められ,層理面は緩く南西に傾斜する。その他は層理や葉理は認められない。
(b)液状化層とその周辺の地質(北東壁TD=11〜16m)
T2トレンチ北東壁のTD=14〜16m付近に認められる液状化部分を対象として,TD=11〜16m,D=2.0〜3.7mの範囲の詳細スケッチ(縮尺1/20)を実施した。(図3−1−4−5)
当詳細スケッチ箇所では,B1層は脈状あるいは噴出相として産し,B2層,B3層およびB4層を貫き,C2層に覆われる。
ここでは,B3層をB3−1〜B3−2に,C2層をC2−1〜C2−3に細分した。
B3−2層では挟在する腐植土の14C年代測定から7390±50yBPの年代値が得られた。
以下に詳細スケッチ箇所に出現する地層の分布と層相,詳細スケッチ結果について述べる。
@B1層:シルト層(液状化層)
TD=13.7〜15.6m,D=2.3〜3.7mに分布する。主にB3−2層中に不規則な脈状で産するほか,B4層上面に噴出相が断続的に分布する。
砂質シルトや細粒砂からなり,オリーブ灰(5GY 5/1)や灰オリーブ(7.5Y 5/2)を呈する。
当スケッチ範囲ではB4層を貫く事象は認められないものの,B4層上面に噴出相がみられる。なお液状化による脈状や噴出相はみられるが,本層の初生的な堆積相は出現しない。
AB2層:礫層および砂礫層(巨礫多い.マトリックス極粗粒砂.液状化層)
TD=11〜15m,D=2.2〜3.7mに分布する。液状化したB1層に貫かれ,B3−2層とB4層およびC2−1層に覆われる。TD=12.3〜13.7m,D=3.2〜3.5mでは本層の極粗粒砂がB3−2層中に貫入しており,これも液状化によるものと判断される。
TD=11〜12.6m,D=2.2〜3.4mでは礫層,TD=3.5〜15.0m,D=3.2〜3.7mでは砂礫層からなる。
礫層は亜角礫および角礫からなる。礫は平均径20〜40cm,最大径50cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が多く,花崗岩礫を伴う。礫の配列は不規則で,礫含有率は70%以上である。マトリックスは極粗粒砂からなり,暗褐(7.5YR 3/3)や黒褐(7.5YR 3/2)を呈する。
砂礫層は径3〜15cmの亜角礫および角礫を主体とする。マトリックスは極粗粒砂で,赤褐(2.5YR 4/6)や明赤褐(5YR 5/8)および暗灰黄(2.5Y 5/2,2.5Y 4/2)を呈する。
BB3−1層:砂礫層(マトリックス中粒砂)
TD=15.3〜16.0m,D=2.9〜3.7mに分布する。本層とB2層およびB3−2層との境界には脈状のB1層(シルト)が分布する。上方ではB4層に覆われ,C2−1層に不整合で覆われる。
角礫および亜角礫からなる砂礫層である。礫は平均径5〜20cmで,最大径は35cmである。礫含有率は50〜60%で,礫の配列は不規則である。マトリックスはさらさらした中粒砂で,灰(7.5Y 5/1)や灰オリーブ(7.5Y 5/2)を呈する。
CB3−2層:砂層(中粒砂.一部粗粒砂.ラミナ,14C年代:7390±50yBP
[T2C2])
TD=11.8〜15.4m,D=2.4〜3.6mに分布する。B1層に貫かれ,B2層を覆い,B4層に覆われる。
中粒砂主体の砂層で,粗粒砂と極粗粒砂と砂質シルトおよび細粒砂を含む。中粒砂は灰(5Y 5/1)や灰オリーブ(5Y 5/2)および黄褐(2.5Y 5/3)を呈し,粗粒砂および極粗粒砂は黄褐(2.5Y 5/4)や暗褐(10YR 3/4)を呈し,砂質シルトおよび細粒砂はオリーブ灰(5GY 5/1)および灰オリーブ(7.5Y 5/2)を呈する。B1層が不規則に貫入するTD=13.8〜15.4mでは初生的な堆積構造は認められず,B1層が貫入しないTD=11.8〜13.8mでは堆積構造が認められ,緩く北西に傾斜する。
TD=12.6〜14.5mのB2層との境界には層厚1〜3cmの腐植土混じりの砂層が断続的に分布し,14C年代は7390±50yBP[T2C2]が得られた。
DB4層:砂礫層
TD=11.4〜15.7m,D=2.2〜3.3mに分布する。B2層とB3−1層およびB3−2層を覆い,C2−1層に覆われる。本層最上部には液状化したB1層の砂質シルトの噴出相が断続的に分布する。
平均径3〜10cmの礫を含む砂礫層で,最大礫径は20cmである。礫は角礫および亜角礫主体で,わずかに亜円礫を含む。礫種は濃飛流紋岩礫が90%以上と大半を占め,花崗岩礫を伴う。わずかに含まれる亜円礫は美濃帯堆積岩類の砂岩が多い。礫含有率は20〜50%である。マトリックスは極粗粒砂および粗粒砂で,灰オリーブ(5Y 5/2)や暗褐(10YR 3/3)を呈する。本層上位に断続的に分布するB1層の噴出相は砂質シルトや砂混じりシルトおよびシルト質砂からなり,オリーブ黄(5Y 6/4)やオリーブ褐(2.5Y 4/4)や黒褐(2.5Y 3/2)および灰(10Y 6/1)を呈する。
EC2−1層:砂礫層(巨礫多い.マトリックス黒褐色の極粗粒砂)
TD=11.0〜16.0m,D=2.0〜3.0mに分布する。B2層,B3−1層およびB4層を不整合で覆う。
亜角礫および角礫を主体とする砂礫層からなる。礫は平均径5〜30cmで,最大礫径は50cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が主体で花崗岩礫を伴う。マトリックスは礫径2〜5cmの角礫を多く含む極粗粒砂で,マトリックス中にはわずかに腐植質なシルトを含み,黒褐(7.5YR 3/2,7.5YR 2/2)や暗褐(7.5YR 3/3)を呈する。
FC2−2層:砂礫層(巨礫多い.マトリックス灰オリーブ色の極粗粒砂)
TD=12.0〜16.0m,D=2.0〜2.6mに分布する。C2−1層を覆い,C2−3層に覆われる。
亜角礫および角礫を主体とする砂礫層からなる。礫は平均径10〜30cmで,最大礫径は30cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が主体で花崗岩礫を伴う。マトリックスは礫径2〜5cmの角礫を多く含む極粗粒砂で,全体にシルト分を含み,灰オリーブ(7.5Y 5/2)や暗オリーブ(5Y 4/3)を呈する。
GC2−3層:砂礫層(マトリックス灰オリーブ色の極粗粒砂)
TD=14.5〜15.2m,D=2.0〜2.1mに分布する。C2−2層を覆う。
礫径2〜10cmの亜角礫と亜円礫および角礫を主体とする砂礫からなる。礫種は濃飛流紋岩礫が主体で,花崗岩礫を伴う。マトリックスはシルト混じり極粗粒砂で,礫径数mmの角礫を含む。灰オリーブ(5Y 5/2)および灰(5Y 5/1)を呈する。
(c)液状化層とその周辺の地質(南西壁TD=10〜16m)
T2トレンチ南西壁のTD=12.8〜13.8m付近に認められる液状化部分を対象として,TD=10〜16m,D=1.4〜3.7mの範囲の詳細スケッチ(縮尺1/20)を実施した。(図3−1−4−6,写真3−1−4−3)
当詳細スケッチ箇所ではB1層が脈状あるいは噴出相として産し,液状化によるものと判断される。B1層はB3層およびB4層を貫き,C2層に覆われる。
ここでは,B2層をB2−1〜B2−3に,B4層をB4−1〜B4−2に,C2層をC2−1〜C2−2に細分した。
B1層を覆うB2−1層最下部に分布する腐植土の14C年代測定から5350±50yBPの年代値が得られた。
以下に,詳細スケッチ結果について述べる。
@A層:礫層
TD=10.0〜11.5m,D=2.7〜3.2mに分布する。B2−2層に覆われる。
亜角礫主体の礫層でわずかに角礫を伴う。礫は平均径5〜15cmで礫径はほぼ揃っている。礫含有率は60〜70%である。マトリックスは細礫を含む極粗粒砂で,灰オリーブ(5Y 5/3)やオリーブ黄(5Y 6/4)を呈し,酸化部分は赤褐(2.5YR 4/6)を呈する。
AB1層:シルト層(砂質シルトおよびシルト質砂)
TD=12.8〜13.8m,D=2.4〜3.0mに分布する。B3層中に幅約10cmの直立したシルト脈として産するほか,B4−3層中やB4−3層の最上部に不規則な脈状や噴出相として産する。TD=13m,D=2.7m付近ではB3層の層理面に沿ってほぼ水平に分布する。
砂質シルトおよびシルト質砂からなり,灰(5Y 6/1)を呈する。
BB2−1層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂)
TD=12.3〜15.9m,D=3.0〜3.7mに分布する。B2−2層やB2−3層およびB3層に覆われる。
亜角礫および亜円礫主体の礫層で一部に角礫を伴う。礫は平均径5〜15cmで,礫径はほぼ揃っている。礫含有率は70%程度である。マトリックスは細礫を含む極粗粒砂で,全体に酸化し赤褐(5YR 4/6,5YR 4/8,2.5YR 4/8)を呈する。TD=12.3〜12.9mでは極粗粒砂および粗粒砂からなり,灰オリーブ(7.5Y 5/2)を呈する。
CB2−2層:礫層(マトリックス中粒砂)
TD=10.0〜12.4m,D=2.6〜3.3mに分布する。A層とB2−1層を覆い,B3層とC1層に覆われる。
濃飛流紋岩礫や花崗岩礫の亜角礫や角礫を主体とする礫からなる。礫は平均径10〜30cmで,最大径は45cmである。礫含有率は60〜70%である。マトリックスは淘汰のよい中粒砂でさらさらしている。黄褐を呈する。TD=11.0〜11.7mでは礫が高角度の傾斜でほぼ定方向配列し,走向傾斜は概ねN59E72NWである。
DB2−3層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂)
TD=14.5〜16.0m,D=2.6〜3.6mに分布する。B2−1層を覆い,B3層とB4−1層およびB4−2層に覆われる。
亜角礫や角砂礫を主体とする砂礫層で,一部に礫径3〜5cmの亜円礫を含む。礫は平均径3〜15cmで,最大径は25cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が主体でわずかに花崗岩礫を含む。亜円礫は美濃帯堆積岩の砂岩礫と濃飛流紋岩礫からなる。礫含有率は50〜60%である。マトリックスは細礫を含む極粗粒砂でにぶい黄褐(10YR 5/3,10YR 5/4)を呈する。
EB3層:砂層(中粒砂.一部粗粒砂およびシルト.ラミナ)
TD=11.4〜14.7m,D=2.5〜3.2mに分布する。液状化したB1層に貫かれ,B2−1層とB2−2層およびB2−3層を覆い,B4−1層とB4−2層に覆われる。
中粒砂および粗粒砂からなる。B1層が分布しないTD=11.4〜12.8mでは堆積構造が認められる。黄褐(2.5Y 5/4)や明黄褐(2.5Y 6/6)を呈する。
FB4−1層:砂礫層(細礫多い.マトリックス極粗粒砂)
TD=11.4〜15.4m,D=2.3〜3.1mに分布する。B2−1層とB3層を覆い,B4−2層とC1層およびC2−1層に覆われる。TD=13.3m付近を境に基底面高度に差がある。本層の基底面高度はTD=11.2〜12.2mではD=2.5〜2.6mで,TD=12.3〜15.4mではD=3.0〜3.1mに位置する。TD=13.3m付近のB3層との境界は高角度であり,B1層が分布する。
亜角礫および亜円礫を主体とする砂礫からなる。礫は平均径2〜5cmで,最大径15cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が主体で花崗岩礫や美濃帯堆積岩類の砂岩礫を伴う。礫含有率は20〜40%である。マトリックスは細礫を含む極粗粒砂からなる。灰(7.5Y 6/1,7.5Y 5/1)を呈し,酸化部は明赤褐(5YR 5/8)を呈する。
GB4−2層:砂礫層(細礫多い.マトリックスシルト混じり極粗粒砂)
TD=13.0〜16.0m,D=2.4〜3.0mに分布する。B2−3層とB4−1層を覆い,C2−1層に不整合で覆われる。
角礫および亜角礫を主体とする砂礫層で,わずかに亜円礫を含む。礫は平均径3〜15cmで,最大径は20cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が主体で,花崗岩礫や美濃帯堆積岩類の砂岩礫を伴う。礫含有率は40%程度である。マトリックスはシルト混じり極粗粒砂で,灰黄(2.5Y 6/2)や暗灰黄(2.5Y 5/2)を呈する。本層最上部に噴出相のB1層のシルトがわずかに分布する。シルトは明黄褐(2.5Y 6/8)や黄褐(2.5Y 5/6)を呈する。
HC1層:砂礫層(巨礫多い.マトリックス極粗粒砂)
TD=10.0〜12.0m,D=1.8〜2.8mに分布する。B2−2層とB4−1層を不整合で覆い,C2−2層に覆われる。C2−1層にも覆われるが分布高度はほぼ同じである。
亜角礫主体の砂礫層で,角礫を伴う。礫は平均径10〜25cmで,最大径35cmと巨礫が多い。礫種は濃飛流紋岩礫が多く,花崗岩礫をわずかに含む。礫含有率は60%程度である。マトリックスは細礫を含む極粗粒砂である。全体に酸化し,にぶい赤褐(5YR 4/3)やにぶい黄褐(10YR 5/4)を呈する。
IC2−1層:砂礫層(マトリックスシルト混じり極粗粒砂,
14C年代:5350±50yBP[T2C3])
TD=11.9〜16.0m,D=2.1〜2.6mに分布する。B4−1層とB4−2層を不整合で覆い,C2−2層に覆われる。C1層を覆うが分布高度はほぼ同じである。
亜角礫および角礫主体の砂礫層で,礫の平均径は5〜15cmで,最大径は25cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が主体で,花崗岩礫をわずかに含む。礫含有率は50%程度である。マトリックスは細礫を含むシルト混じり極粗粒砂で,黒褐(7.5YR 3/2,7.5YR 3/1)や暗褐(7.5YR 3/4)を呈する。本層最下部には層厚2〜5cmの腐植質なシルトが断続的に分布する。このシルト層は液状化により噴出したB1層の再堆積物とその上面に堆積した腐植質土であるとみなされる。シルトは明黄褐(2.5Y 6/8)や黄褐(2.5Y 5/6)を呈し,シルト層の上部は黒褐(2.5Y 3/2)を呈する。
TD=13.5〜14.3mの本層最下部の腐植質シルトより採取した試料[T2C3]から5350±50yBPの14C年代が得られた。
JC2−2層:砂礫層(巨礫多い.マトリックスシルト混じり極粗粒砂)
TD=10.9〜16.0m,D=1.4〜2.5mに分布する。層厚50〜80cmの連続した層で,C1層とC2−1層を覆い,C5層に覆われる。
亜角礫と角礫からなる砂礫層で,礫の平均径は10〜40cmで,最大径は60cmである。礫種は濃飛流紋岩礫主体で,花崗岩礫をわずかに含む。礫含有率は30〜40%である。マトリックスはシルト混じり極粗粒砂およびシルト混じり粗粒砂で,にぶい黄褐(10YR 5/4)やオリーブ褐(2.5Y 4/3)を呈する。
KC5層:砂層およびシルト層
TD=13.9〜16.0m,D=1.4〜2.0mに分布する。C2−2層を覆う。
中粒砂と細粒砂と砂質シルトおよび腐植質細粒砂〜シルトからなる。中粒砂および細粒砂はにぶい黄(2.5Y 6/4)や灰黄(2.5Y 6/2)を呈する。砂質シルトは灰(7.5Y 6/1)や灰オリーブ(7.5Y 6/2)を呈し,酸化部は黄(2.5Y 7/8)を呈し,腐植質土は黒褐(2.5Y 3/1)を呈する。
(d)液状化層とその周辺の地質(南西壁TD=21〜25m)
T2トレンチ南西壁のTD=22.1〜24.8m付近に認められる液状化部分を対象として,TD=21〜25m,D=3.0〜4.2mの範囲の詳細スケッチ(縮尺1/20)を実施した。(図3−1−4−7)
当詳細スケッチ箇所ではB1層のシルトおよび砂の液状化が認められたほか,B2層の砂の液状化が認められた。液状化層は脈状あるいは噴出相として産する。
ここでは,B1層をB1−1〜B1−3に,B2層をB2−1〜B2−3に,C2層をC2−1〜C2−3に細分した。
当詳細スケッチ箇所では液状化したB1層とB2層の砂が脈状にB2層の砂礫を貫き,噴出相としてB2層の砂礫を覆う様子が連続して確認できる。液状化層はC2層に覆われる。
以下に,詳細スケッチ結果について述べる。
@B1−1層およびB1−2層:砂層およびシルト層(中粒砂,砂質シルトおよびシルト質砂)(液状化層)
TD=22.1〜24.6m,D=3.5〜4.2mに分布する。液状化した本層とB2−1層はB2−2層およびB2−3層を貫き,C2−1層とC2−2層およびC2−3層に覆われる。
中粒砂(B1−1層)と砂質シルトおよびシルト質砂(B1−2層)からなる。中粒砂は灰(7.5Y 5/1,10Y 5/1)を呈し淘汰がよい。砂質シルトおよびシルト質砂は新鮮部で灰オリーブ(5Y 5/2)を呈し,酸化部は明黄褐(2.5Y 6/6,.5Y 6/8)を呈する。礫はほとんど含まない。脈状部分と噴出相は一連の液状化層で,TD=24〜24.5mm付近では幅約50cmのほぼ直立したシルト〜砂脈として産し,TD=22〜24m付近では層厚2〜30cmのほぼ水平に堆積した噴出相として産する。脈状部分ではシルト層は砂層中に幅1〜10cmの不規則な脈状に分布する。噴出相はほぼ水平な層状構造が見られ,噴出口から離れるにつれシルトが優勢となる。以上のような堆積相は液状化によりけいせいされたものと判断される。本層のシルト〜砂脈の周囲には液状化したB2−3層の極粗粒砂が分布する。なお本層の初生的な堆積相は出現しない。
AB2−1層:砂層(極粗粒砂および粗粒砂)(液状化層)
TD=22.2〜24.8m,D=3.4〜4.2mに分布する。本層は液状化層であり,B1層の周囲を取り巻くように分布する。液状化した本層とB1層はB2−2層とB2−3層を貫き,C2−1層とC2−2層およびC2−3層に覆われる。
極粗粒砂および粗粒砂からなり,少量の礫を含む。灰(10Y 5/1)および黄褐(2.5Y 5/3)を呈し,酸化部は明黄褐(2.5Y 6/6)を呈する。
BB2−2層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂)
TD=21.0〜23.4m,D=3.7〜4.0mとTD=24.1〜25.0m,D=3.3〜4.2mに分布する。液状化したB1−1層とB1−2層およびB2−1層に貫かれ,B2−1層に覆われる。C2−1層とC2−2層とC2−3層には不整合で覆われる。
角礫と亜角礫からなる砂礫層で,礫は平均径3〜14cmで,最大径30cmである。礫種は濃飛流紋岩礫からなり花崗岩礫を含む。礫含有率は30〜40%である。マトリックスは細礫を多く含む極粗粒砂で,灰オリーブ(7.5Y 5/2)を呈する。
CB2−3層:礫質シルト層
TD=21.6〜22.9m,D=3.5〜4.0mに分布する。B2−2層を覆い,B1−1層とB1−2層およびB2−1層に覆われる。C2−1層には不整合で覆われる。
亜角礫と角礫を含む礫質シルト層で,礫の平均径は5〜15cmで,最大径は25cmである。礫は濃飛流紋岩礫からなる。マトリックスは砂質シルトおよびシルト質細砂からなる。灰(7.5Y 6/1)や灰オリーブ(7.5Y 6/2)を呈し,酸化部はにぶい黄(2.5Y 6/4)を呈する。
DC2−1層:砂礫層(マトリック極粗粒砂)
TD=21.0〜23.8m,D=3.2〜3.7mに分布する。液状化したB1層とB2−1層やB2−2層とB2−3層を不整合で覆い,C2−1層に覆われる。
亜角礫と角礫主体の砂礫層で,礫の平均径は3〜20cmで,最大径は40cmである。礫は濃飛流紋岩礫が主体で,わずかに花崗岩礫を含む。礫含有率は50%程度である。マトリックスは細礫を含む極粗粒砂で,灰黄褐(10YR 4/2)やにぶい黄褐(10YR 4/3)を呈する。
EC2−2層:砂礫層(巨礫多い.マトリックスシルト混じり極粗粒砂)
TD=21.0〜24.5m,D=3.0〜3.5mに分布する。液状化したB2−1層,B2−2層を不整合で覆い,C2−1層を覆う。C2−3層に覆われる。
角礫や亜角礫主体の砂礫層からなる。礫は平均径10〜30cm,最大径50cmであり,巨礫が多い。マトリックスは細礫を含む極粗粒砂で,シルトを含む。暗褐(10YR 3/3)および灰黄褐(10YR 4/2)を呈する。
FC2−3層:砂礫層(マトリックスシルト混じり極粗粒砂)
TD=23.7〜25.0m,D=3.0〜3.3mに分布する。B2−2層を不整合で覆い,C2−2層を覆う。
角礫および亜角礫主体の砂礫層からなる。礫は平均径3〜10cmで,濃飛流紋岩礫が多く花崗岩礫を伴う。マトリックスはシルト混じり極粗粒砂で,オリーブ褐(2.5Y 4/3)を呈する。
(e)T2トレンチにおける地層の連続性と断層の有無
A層は,T2トレンチ基底部に分布するが,TD=11〜26m間では上位のB層がA層を不整合で覆って分布する。A層およびB層をほぼ地形なりの傾斜でC層が覆う。これらの地層はいずれも砂礫層が主体であるが,礫の大きさ,淘汰の程度,マトリックスの性状などから識別が可能である。すなわち,A層は,礫平均径が5〜10cmとほかの地層に比べ小さく,淘汰は良い。マトリックスはシルト混じりの粗粒砂で締まりは良い。B2層は,礫平均径が5〜15cmで50cm大のものも多く含む。マトリックスは極粗粒砂からなる。C1層は,礫平均径が10〜20cmで50cmを超えるものも多く含まれ,マトリックスは細礫を含む極粗粒砂からなる。C2層は,礫平均径が5〜15cmで淘汰は悪く,50cm大のものも多く含む。マトリックスは極粗粒砂〜粗粒砂からなる。
このような各層の特徴から,特にA層およびB層を覆うC1層およびC2層の基底面は地形なりの傾斜でほぼ連続することが確認でき,この面に断層による変位は認められない。
さらに北東壁全区間において,C4層(マトリックスが腐植質な砂質シルト)と下位のC1層およびC2層との境界は比較的容易に識別でき,この境界面はほぼ連続している。
(f)T2トレンチにおける液状化層とその他の地層の関係
T2トレンチでは,北東壁のTD=14〜16m付近,南東壁のTD=12.8〜13.8m付近および南東壁のTD=22.1〜24.8m付近で液状化現象が認められる。北東壁のTD=14〜16m付近ではB1層は液状化によりB2層,B3層およびB4層を貫き,C2層に覆われる。南東壁のTD=12.8〜13.8m付近ではB1層は液状化によりB3層とB4層を貫き,C2層に覆われる。南東壁のTD=22.1〜24.8m付近ではB1層とB2層の一部が液状化によりB2層の砂礫を貫き,C2層に覆われる。
液状化層に貫かれるB3−2層基底部(北東壁のTD=12.6〜13.5m)の腐植土層の14C年代値は7390±50yBP(T2C2)を示し,液状化層を覆うC2−1層基底部(南西壁のTD=13.5〜14.4m)の腐植土層の14C年代値は5350±50yBP(T2C3)を示す。したがって,液状化の時期は5400年前から7400年前の間であると判断される。