(2)ET−2トレンチ

(a)地質の記載

ET−2トレンチの展開図を図3−3−12に示す。ET−2トレンチの地質は主に砂礫からなり、砂層や腐植土層を挟む。当トレンチに出現する地層は上位からA層、B層、C層、D層、E層、F層、G層に区分される。A層は盛土および耕土からなる。B層は表土(腐植土)からなる。C層は径3〜5cmの角礫を主体とする砂礫からなる。D層は花崗岩のクサリ礫が多い砂礫からなり、腐植土を伴う。E層は細粒砂をマトリックスとする砂礫からなり、砂層を挟む。F層は極粗粒砂をマトリックスとする砂礫からなり、腐植土を伴う。G層はサラサラした極粗粒砂をマトリックスとする砂礫からなり、上部に淘汰のよい細粒砂を伴う。

当トレンチに分布する地層は下流(北西)側に緩く傾斜するものの概ね下位の地層から整然と累重している。人工改変によるA層を除いて、当トレンチに出現する最上位層であるB層はトレンチ周辺の地形面(F4−3面)形成後の表土である。トレンチ周辺ではC層がF4−3面の離水期の堆積物であると考えられる。

圃場整備による人工改変により、当トレンチでは原地形直下の地層が大きく削剥されている。特に、トレンチ上流側で顕著である。

A層:盛土および耕土

層相は礫・砂混じりの腐植質土からなる。全体に均質で,下位の表土を径2〜3cmの偽礫状に含む。全体に細粒砂を混入する。色は黒(10YR2/1)を呈する。

B層:表土(腐植土)

層相は礫や砂を含む腐植土からなり,色は黒(10YR1.7/1)を呈する。

C層:砂礫(径3〜5cmの角礫主体)

層相は一般径3〜5cmの亜角礫を主体とする砂礫からなる。礫含有率は高く,礫の配列がみられる。マトリックスはシルト質細粒砂および中粒砂からなり花崗岩細礫を多く含む。色は灰黄褐(10YR5/2)および黄褐(2.5Y5/4)を呈する。

D層:砂礫(花崗岩のクサリ礫の巨礫多い.腐植土を挟む.)

本層は花崗岩の径20〜50cmクサリ礫の巨礫を含む特徴がある地層である。西壁は砂礫からなりマトリックスが主に極粗粒砂からなる。それに対し,東壁は全体に礫がまばらでマトリックスは細粒砂〜粗砂からなり,腐植質砂層を2層を挟む。

砂礫部分は径20〜30cmの亜円礫および亜角礫を含み,マトリックスは極粗粒砂,粗粒砂および細粒砂からなる。にぶい黄褐(10YR5/4)を呈する。腐植質砂はまばらに礫を含む細粒砂で腐植質な粒子を多く含む。色は黒(10YR2/1)および黒褐(10YR2/3, 10YR3/2)を呈する。

E層:砂礫(マトリクス細粒砂.砂層を挟む.)

層相は一般に径10〜20cmの亜円礫を含む砂礫で,西壁のTD=0〜7mでは花崗岩風化礫の巨礫をわずかに含む。東壁では砂層を挟む。マトリックスは細粒砂が主体で,上位層や下位層と区別できる。特に本層最上部にはマトリックスがシルト混じり細砂の層準が連続して追跡でき,概ね赤褐色を呈する酸化帯に一致する。色は灰黄褐(10YR6/2)やにぶい黄褐(10YR5/3)を呈する。東壁に挟まれる砂層は粗粒砂主体で中粒砂や細粒砂を含む。平行層理がみられる。色は暗灰黄(2.5Y5/2)や黄褐(2.5Y5/4)を呈する。

F層:砂礫(マトリックス極粗粒砂.腐植土を伴う.)

層相は一般に径5〜15cmの礫を含む砂礫で,マトリックスは径1cm以下の花崗岩細礫を多く含む極粗粒砂である。東壁のTD=9mより下流側では本層下部に腐植質シルトおよび腐植質砂を含む。砂礫の色はにぶい黄褐(10YR5/3)を呈し,腐植質土は(10YR2/1)を呈する。

G層:砂礫(マトリックスはさらさらした極粗粒砂.上部に淘汰のよい細粒砂を伴う.)

層相は一般に径5〜20cmの亜角礫主体の砂礫層で,マトリックスは非常に緩い極粗粒砂からなることが多い。西壁のTD=0.9〜3.9mのD=1.5〜4mと,東壁のTD=7.3〜13.5mのD=2.5〜3.3mでは淘汰のよい細粒〜中粒砂を伴う。砂礫はにぶい黄(2.5Y6/3)やにぶい黄褐(10YR5/3)を呈し,砂は灰オリーブ(5Y5/3)を呈する。

(b) 礫の異常配列

当トレンチでは南西壁のTD=3.7mからTD=6m付近で礫の異常配列がみられる。礫の異常配列がみられるのはF層とG層である(詳細スケッチ:図3−3−13−1図3−3−13−2)。

南西壁のTD=3.7m〜TD=4.1m間で礫が60〜80°の南東傾斜で配列する。この礫の異常配列の区間を境にG層中の細層やF層中の細層がいずれも70〜80cm北西(下流)側落ちに変位しているようにみえる。特に上流側から連続するG層中に挟在する細粒砂層は不連続となり、TD=3.9〜4m,D=2.4〜2.7m付近でほぼ直立する。また、南西壁のTD=4.5m,D=2.8mからTD=5.9m,D=2mではG層とF層中に30〜40°南傾斜で、幅約10cmの礫の異常配列がみられる。

一方、北東壁では南西壁で見られるような礫の顕著な異常配列は認められない。

現地での委員会では、南西壁で見られた礫の異常配列と地層の不連続は、断層によるものであるという見解と土石流の堆積現象であるという見解が出されたが、同様な現象が北西壁では明瞭には認められず、断層説と認定するには至らなかった。

(c)14C年代

F層に挟在する腐植質砂層から採取した腐植土の14C年代は、6,460yBP,6,540yBPを示す。

D層から採取した腐植土の14C年代は、5,240yBP,6,510yBPを示す。

B層から採取した腐植土の14C年代は、3,950yBPを示す。