(1)地質の記載

BT−1トレンチの地質は主に角礫を含む砂礫からなり西壁と東壁のほぼ中央部に30〜50°に北傾斜したシルト層が分布する。上記シルト層の上位の砂礫層と下位の土石流堆積層中の堆積構造はいずれも10°程度北北西に傾斜し、上記シルト層とは構造的に斜交する。いずれの地層も、南南東の山地から供給された土石流堆積物である。これらの地層を覆って層厚1〜2mの表土(腐植土)が分布する。

BT−1トレンチに出現する地層は上位からA層、B層、C層、D層、E層、F層、G層、H1層、H2層、J層およびK層に区分される。A層は表土(腐植土)からなる。B層は礫混り砂からなる。C層は砂礫からなり、崩積性堆積物である。D層はマトリックスが腐植質砂からなる砂礫である。E層はマトリックスがシルト質砂からなる砂礫である。F層はマトリックスが極粗粒砂からなる砂礫である。G層は粗粒砂を主体とする砂層で、ラミナが発達する。構造的にはH1層と調和的である。H1層は層厚1m程度のシルト層で、トレンチ西壁および東壁の中央部で30〜50°に北傾斜する。H2層は礫混りシルトからなり、構造的にはH1層と調和的である。J層はマトリックスが極粗粒砂の砂礫からなる。K層はマトリックスが細粒砂の砂礫からなる。

A層:表土(腐植土)

層相は腐植質な砂混じりシルトを主体とし,腐植質砂や腐植質砂礫をわずかに含む。黒(7.5Y2/1)や黒褐を呈する。14C年代は3,210yBP,4,280yBPを示す。

B層:礫混じり砂

本層は東壁のTD=11.6〜24mのD=5〜7mに分布するほか,西壁のTD=11.6〜12.2mのD=5.6〜5.8mに小分布する。

層相は径5〜7cmの濃飛流紋岩および花崗岩の亜角礫および角礫を含む礫混じり砂で,最大礫径は50cmである。花崗岩はクサリ礫化しているものが多い。マトリックスはシルト質砂からなる。色は明黄褐(10YR6/8)を呈する。

C層:砂礫(崩壊性堆積物)

層相は径3〜20cmの亜円礫および亜角礫を含む砂礫。マトリックスは淘汰の悪い不均質なシルト混じり砂。色はにぶい黄(2.5Y6/4)やにぶい黄褐(10YR6/4)を呈する。

D層:砂礫(マトリックスは腐植質砂)

層相は径5〜30cmの濃飛流紋岩および花崗岩の角礫を含む砂礫。下部に径10〜30cmの巨礫が多く上方に向かって礫径は小さくなる。マトリックスは弱い腐植質な粗粒砂および細粒砂で,色は褐(7.5YR4/3)やにぶい褐(10YR4/3, 10YR5/3)を呈する。

14C年代は3,180yBP(腐植),3,220yBP(腐植)、3,450yBP(腐植)を示す。

E層:砂礫(マトリックスはシルト質砂)

層相は径5〜30cmの亜円礫,亜角礫,角礫からなる砂礫を主体とする。礫は濃飛流紋岩礫が多く一部花崗岩礫を含む。西壁のTD=9.5〜12.6mのD=5.6〜6mでは礫混じり砂。マトリックスはシルト質極粗粒砂およびシルト質粗粒砂で,下流(北方向)に向かってマトリックスは細粒になり,礫含有率が小さくなる。層理面の走向傾斜は西壁のTD=10.8m,D=6.7mでN28E32NWを示す。

色はにぶい黄橙(10YR6/4)やにぶい黄(2.5Y6/4)を呈する。

F層:砂礫(マトリックスは極粗粒砂)

層相は一般径3〜10cmの濃飛流紋岩礫からなる砂礫を主体とする。礫含有率が高い。マトリックスは極粗粒砂が多く,一部に細粒砂を含む。下流(北方向)に向かって序々に礫含有率は小さくなり礫径は大きくなる傾向があり,TD=16mより下流側では径10〜30cmの礫が多い。色は褐(10YR4/6),明黄褐(10YR6/8),にぶい黄(2.5Y6/4)などを呈する。

14C年代は、3,480yBP(腐植)を示す。

G層:砂(粗粒砂主体.ラミナ発達)

層相は葉理の発達した極粗粒砂や礫混じり極粗粒砂からなり,砂礫を薄く挟む。層理面の走向傾斜は下位のH層と同程度。層理面の走向傾斜は東壁のTD=12.3m,D=8mでN72W23Nを示す。色はにぶい黄褐(10YR5/4)や青灰(10BG6/1)や明褐(7.5YR5/6, 7.5YR5/8)を呈する。

H1層:シルト

層相はほぼ均質なシルトからなり,最上部に層厚5〜10cmの腐植土および腐植質シルトがほぼ連続して挟在する。下部には径20cm程度の濃飛流紋岩角礫を含む。地層の傾斜はTD=15mより下流側(北側)で10°以下の傾斜であるが,上流側に向かって序々に急傾斜となり,TD=8〜11m付近で45〜50°と最も急傾斜となる。本層の分布はTD=3〜8mで途切れるが,TD=0〜2.5mでは10°程度の緩傾斜になる。色はシルトで青灰(5B6/1)、酸化部で橙(7.5YR6/4)や黄褐(10YR5/8)、腐植質シルトで黒(N2/)や暗灰(N3/)および灰(2.5Y6/4)を呈する。

層理面の走向傾斜は西壁のTD=14.8m,D=8.8mでN86W9NE,TD=12.3m,D=7.8mでN42E35NW,TD=10.8m,TD=9.8m,D=6.1mでN64E45NWを示す。東壁のTD=10.7m,D=7.2mでN73E42NW,TD=10.5m,D=7.7mでN77E30NWを示す。

14C年代は13,760yBP(腐植),12,970yBP(木片)を示す。

H2層:礫混じりシルト

層相は礫混じりシルトが主体や砂礫からなる。本層の下位の層準は礫含有率が大きくマトリックスは粗砂からなるが,上位に向かって礫含有率が小さくなりマトリックスは細粒になり,上位のH1層に漸移する。礫は径5〜50cmの濃飛流紋岩と花崗岩の亜角礫からなる。マトリックスは大部分がシルトや砂質シルトおよびシルト質砂からなるが,本層の最下部では極粗粒砂からなる。全体に酸化し,明褐(7.5YR5/8),橙(7.5YR6/8),黄褐(10YR5/8)を呈する。新鮮部は青灰(5B6/1)や灰白(7.5Y8/1)を呈する。

I層:砂(細粒砂および粗粒砂)

層相は細粒砂と粗粒砂の互層で,層理が発達する。色はにぶい黄橙(10YR7/3, 10YR7/4)を呈する。層理面の走向傾斜は西壁のTD=4.7m,D=3.8mでN30W10NE,TD=1.7m,D=3.4mでN60E13NWを示す。

J層:砂礫(巨礫多い.マトリックスは極粗粒砂)

層相は径30〜100cmの花崗岩と流紋岩の巨礫を多く含む砂礫層で,マトリックスは極粗粒砂からなる。にぶい黄(10YR7/4)を呈する。層理面の走向傾斜は南壁のTD=5.7m,D=2.3mでN10W17Wを示す。

14C年代は、4,370yBP(腐植)を示す。

K層:砂礫(マトリックスは細粒砂)

層相は径3〜10cmの角礫および亜角礫からなる砂礫層で,所々に径100cm程度の巨礫を含む。マトリックスは細粒砂からなる。色はにぶい黄褐(10YR6/4)を呈する。層理面の走向傾斜は東壁のTD=2.4m,D=4.8mでN23E6NWを示す。