(1)屏風山断層

屏風山断層の活動性の評価に際し,@第四紀後期に活動した可能性が高い区間でのより詳細な活動履歴の把握と,A変位地形が認められない箇所での活動履歴を明らかにすること,が今後の課題である。@の課題については,中津川市中垣外南東(Loc.8)において年代測定調査を実施し活断層としての性状を把握することが望まれる。Aの課題については,同断層を横断して高位段丘面や中位段丘面相当の地形面が分布する地点(Loc.1,Loc5)で地表踏査(精査)を実施して,同断層と対象となる地形面および堆積層との関係を詳細に観察・記載することが望まれる。

@第四紀後期に活動した可能性が高い区間でのより詳細な活動履歴の把握

第四紀後期に活動した可能性が高い中津川市中垣外南東(Loc.8)では,同断層を横断する土石流堆積面のうちF2面とF3面で撓曲崖が認められ,F4面・F5面・F6面・F7面に変位地形が認められない。各地形面の形成時期がわかれば,F2面形成時期とF3面形成時期の間の平均変位速度が得られ,最終活動時期はF3面形成後,F4面形成前という幅をもった値として限定できる。ただし当地点の土石流堆積層はほとんどが礫質の堆積物であり,地形面形成年代を示す試料は得難いとみられる。唯一土石流堆積層X(F5面構成層)中には礫層中に層状に砂層や腐植土層を挟む。このうち腐植土層からは14C試料が得られる可能性がある。

A変位地形が認められない箇所での活動履歴を明らかにする

屏風山断層南西部のうち,瑞浪市大草(Loc.1)では中位段丘面相当とみられる段丘化した土石流堆積面(F3面,F4面)が同断層を横断して分布し,恵那市鍋山(Loc.5)では,高位段丘面(H1面)が同断層を横断して分布する。このいずれの地形面にも変位地形がなく,屏風山断層南西部は第四紀後期に活動した可能性が低いとみられる。