手賀野断層北東部に当たる中津川市深沢〜中津川市手賀野地点(Loc.17と18)において,各段丘面の累積変位量は,高位段丘面に相当するH1面で22〜23m,中位段丘面に相当するM1面で11〜12m,M2面で7〜9m,M3面で4〜5mである。
手賀野断層南西部では,恵那市後田地点(Loc.14)でH1面に6〜7mの断層変位が認められるほか,屏風山断層から派生するように分布する部分では低位段丘面(L2面)や土石流堆積面に断続的に撓曲崖様の地形が認められる。
各段丘面の形成年代としては,M3面が約50kaとされる木曽川泥流堆積物(中村ほか:1992)に覆われるほかは,段丘面の形成年代を示す資料や試料は得られていない。本報告では,各段丘面の中津川からの比高とM3面の形成年代(約50kaと推定)に基づいて,M1面は100〜120ka,M2面は70〜90kaと仮定した。H1面については森山(1987)が約300kaと推定していることからやや幅を持たせて200〜300kaと仮定した。この仮定に基づくと,手賀野断層の平均変位速度Sは,北東部(深沢〜手賀野地点)でS=0.07〜0.12m/千年,南西部(後田地点)でS=0.02〜0.04m/千年となり,北東部と南西部では明瞭な違いが認められることがわかる。