(2)手賀野断層

手賀野断層は恵那盆地中に位置し,北東−南西方向で長さ約7.5km,南東側隆起のリニアメントを形成している。この断層周辺の地域は新第三系鮮新統瀬戸層群土岐砂礫層を基盤とし,段丘堆積層(高位,中位,低位)や土石流堆積層などの第四系が土岐砂礫層を不整合に覆っている。北東側の長さ約4.5km区間では,明瞭な変位地形がほぼ連続的に分布している。このように,北東側の段丘面や土石流堆積面に累積的な断層変位が認められるのに対し,南西側の長さ約3km区間では断層が2条に分岐し,変位地形は不明瞭である。

手賀野断層北東部に当たる中津川市深沢〜中津川市手賀野地点(Loc.17と18)において,各段丘面の累積変位量は,高位段丘面に相当するH1面で22〜23m,中位段丘面に相当するM1面で11〜12m,M2面で7〜9m,M3面で4〜5mである。

手賀野断層南西部では,恵那市後田地点(Loc.14)でH1面に6〜7mの断層変位が認められるほか,屏風山断層から派生するように分布する部分では低位段丘面(L2面)や土石流堆積面に断続的に撓曲崖様の地形が認められる。

各段丘面の形成年代としては,M3面が約50kaとされる木曽川泥流堆積物(中村ほか:1992)に覆われるほかは,段丘面の形成年代を示す資料や試料は得られていない。本報告では,各段丘面の中津川からの比高とM3面の形成年代(約50kaと推定)に基づいて,M1面は100〜120ka,M2面は70〜90kaと仮定した。H1面については森山(1987)が約300kaと推定していることからやや幅を持たせて200〜300kaと仮定した。この仮定に基づくと,手賀野断層の平均変位速度Sは,北東部(深沢〜手賀野地点)でS=0.07〜0.12m/千年,南西部(後田地点)でS=0.02〜0.04m/千年となり,北東部と南西部では明瞭な違いが認められることがわかる。