(1)屏風山断層

屏風山断層は恵那山地と東濃丘陵を境する大地形としての崖地形は明瞭であるが,リニアメントの大部分は花崗岩からなる起伏の大きな山地と,新第三系(瑞浪層群,瀬戸層群)や第四系(段丘堆積層,土石流・扇状地堆積層)からなる起伏の小さい丘陵の境界に遷緩線として判読される。屏風山断層は変位地形の有無やリニアメントの明瞭さから瑞浪市稲津町小里から恵那市浜井場に至る南西部(長さ約18km)と,恵那市浜井場から中津川市霧ヶ原南西に至る北東部(長さ約14km)に区分される。

@屏風山断層南西部

屏風山断層南西部では屏風山断層を横断して高位段丘面や中位段丘に相当すると判断される土石流堆積面が分布するが,これらの地形面に断層変位は認められない。

瑞浪市大草では花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層の断層露頭(BY−7)が確認される。その周辺の瑞浪市大牧〜大草(Loc.1)では段丘化した土石流堆積面(F3面〜F5面)が良く発達している。F3面,F4面,F5面は,屏風山断層を横断するように分布するが,これらの土石流堆積面に断層変位地形は認められない。現河床からの比高はF3面で約20m,F4面で約10m,F5面で約5mである。(図3−1−5−1

恵那市上平〜中切〜大沢(Loc.4)にかけては,リニアメントは濃飛流紋岩・花崗閃緑岩からなる山地と瀬戸層群からなる丘陵地の境界に連続する遷緩線として判読される。リニアメント北西側の瀬戸層群分布域には土石流堆積層(F3面,F4面,F5面,F6面に相当)が分布する。これらの土石流堆積面に断層変位地形は認められない(図3−1−5−2)。

恵那市鍋山(Loc.5)では,高位段丘面(H1面)はほぼ直線的な境界で山地と接する。花崗岩との境界部近傍の瀬戸層群土岐砂礫層の層理面の傾斜角度は70°程度と高角度で,土岐砂礫層中に小断層(BY−24)が見られることもある。屏風山断層の主断層は確認できないが,高位段丘面(H1面)の一部は地質分布から想定される地質断層としての屏風山断層を横断して分布する。今後,この段丘堆積層の分布を詳細に調査すれば,屏風山断層の活動性について言及できる可能性のある地点の一つである。

A屏風山断層北東部

屏風山断層北東部は,中津川市中垣外南東(Loc.8)で花崗岩と土石流堆積層Tを境する断層露頭が確認されたほか,F2面,F3面で低断層崖や撓曲崖などの断層変位地形が認められる。このような断層露頭や断層変位地形が認められるのは約1km程度の区間で,そのほかは屏風山断層の第四紀後期の活動性を直接的に示す事象は認められない。

恵那市向島〜浜井場(Loc.6)では阿木川や飯沼川による低位段丘面(L2面)が分布するが,屏風山断層による断層変位地形は認められない。

中津川市中垣外(Loc.8)では地表踏査(精査)を実施しており,その結果は「3.1.4 地表踏査(精査)」で詳細に記した(図3−1−4−1)。中津川市中垣外地点(Loc.8)では花崗岩と礫がクサリ礫化した土石流堆積層を境する断層露頭(BY−35断層露頭)が確認される。またこの断層露頭の周辺では,地質分布から屏風山断層が通過すると想定される位置において,複数の土石流堆積面に変位地形が認められる。各土石流堆積面の変位量はF2面で5〜6m,F3面で2〜3mで,F4面,F5面,F6面,F7面に変位地形は認められない。

中津川市尾鳩〜恵下(Loc.9)では開析の進んだ高位段丘面が分布し,リニアメントは山地と高位段丘堆積層の境界に直線的に分布する(図3−1−5−4)。花崗岩側には複数の破砕帯露頭が分布するが,花崗岩と高位段丘堆積層の境界は開析が進み,花崗岩と高位段丘堆積層の直接的な接触関係は確認できなかった。F5面がリニアメントを横断して分布するが,F5面には変位地形は認められない。

中津川市釜沢南東〜霧ヶ原南西(Loc.10)では,屏風山断層は花崗岩と流紋岩を境する地質断層で,リニアメントは鞍部地形の連続や直線上谷として判読される。地質断層とリニアメントの分布位置がややズレがある。温川と湯舟沢川に挟まれた中津川市霧ヶ原(Loc.12)では中位段丘面(M1面)が広く分布し,中位段丘面(M1面)の屏風山断層北東延長部には断層変位地形は認められないことから,屏風山断層は霧ヶ原より北東には延びないと判断される。