(2)地質各説

以下に各地層・岩体毎に分布と岩相上の特徴を述べる。

@美濃帯堆積岩類(Ms)

美濃帯堆積岩類は土岐市柿野温泉から蘭仙北方にかけて分布するほか,瑞浪市稲津付近や瑞浪市住久保付近に小規模な分布が認められる。岩相は砂岩,泥岩,砂岩泥岩互層からなり,一部にチャートを含む。砂岩頁岩互層中は乱堆積相で,砂岩はレンズ状の形態を呈する(写真1)。

A濃飛流紋岩(Nr)

濃飛流紋岩は恵那市以東の恵那盆地周辺に分布する。流紋岩および流紋岩質溶結凝灰岩からなり,径2〜5mmの石英の斑晶を特徴とする。(写真2写真3

B領家花崗岩類(Gr,Gdp)

領家花崗岩類は花崗岩(Gr)と花崗閃緑岩(Gdp)からなる。

花崗岩は美濃帯堆積岩類や濃飛流紋岩とともに,瑞浪層群や瀬戸層群などの新第三系の基盤岩として調査地およびその周囲に広く分布する。岩相は一般に粗粒な黒雲母花崗岩および黒雲母角閃石花崗岩(写真4)で,地表や断層周辺ではマサ化していることが多い。

花崗閃緑岩は屏風山断層周辺の恵那市東組から恵那市浜井場,中津川市神坂付近に分布するほか,猿投山北断層周辺で,美濃帯堆積岩類中に幅数10cm〜100m程度の貫入岩として産する。暗灰色を呈する細粒・緻密な石基中に径数mmの長石類や石英の斑晶を特徴的に含む(写真5)。

Cドレライト(Do)

ドレライトは主に恵那山断層に近傍に幅数10cm〜数mの貫入岩として産する。貫入面はNW走向で高角度傾斜であることが多い(写真6)。新鮮面で暗緑色を呈する完晶質な岩石である。

D瑞浪層群(Mz)

瑞浪層群は恵那山断層に沿った山岡町天池以東の岩村盆地に分布するほか,瑞浪市稲津付近の小里川付近に分布する。美濃帯堆積岩類,濃飛流紋岩,領家花崗岩を不整合に覆い,瀬戸層群には不整合に覆われる。岩相は主に泥岩,砂岩からなり,礫岩,岩礫砂岩,凝灰岩を含む。岩相変化に富む。(写真7

E瀬戸層群(Tg)

瀬戸層群は屏風山断層前縁の東濃丘陵に広く分布するほか,土岐市柿野から山岡町天池にかけて,恵那山断層前縁の山間盆地に分布する。瀬戸層群は瑞浪層群など中新統以前の地層・岩体を不整合に覆い,段丘堆積層などの第四系に不整合で覆われる。

瀬戸層群は岩相上の特徴から,主に陶土層からなる土岐口陶土層と,主に砂礫層からなる土岐砂礫層に大別され,土岐砂礫層は土岐口陶土層の上位に位置する。瀬戸層群の分布域の大部分は土岐砂礫層(写真8)からなり,土岐口陶土層は山岡町原付近にわずかに分布するのみである。土岐砂礫層中の礫はほとんどが円磨された美濃帯起源の礫からなるが,恵那盆地中では,ほとんどが濃飛流紋岩礫からなる土岐砂礫層が認められることがある。

F段丘堆積層

段丘堆積層は高位段丘堆積層,中位段丘堆積層,低位段丘堆積層に区分される。段丘堆積層は屏風山断層周辺の東濃丘陵では恵那盆地に広く分布するほか,小里川や佐々良木川に沿って小規模な分布がみられる。恵那山断層周辺では岩村盆地で岩村川や阿木川に沿って分布するほか,肥田川や小里川左支川に沿った恵那山断層前縁の小規模な山間盆地に小分布する。

(@)高位段丘堆積層(trh)

高位段丘堆積層は屏風山断層周辺では中津川右岸の中津川市尾鳩から恵下,湯舟沢川と落合川間の中津川市蕨平に広く分布するほか,恵那市西組,恵那市鍋山の土岐川最上流部,永田川右岸に小規模な分布が認められる。手賀野断層周辺では恵那市後田付近に分布し,野久保断層周辺では木曽川右岸の中津川市前鼻から野久保にかけて分布する。中津川市尾鳩から恵下および中津川市蕨平に分布する本層はH2面構成層(写真9)で,層相は濃飛流紋岩の角礫を多く含む角礫層からなる。そのほかの本層はH1面構成層(写真10)で,層相は円礫層からなる。いずれも含有礫はクサリ礫化しており,マトリックスは赤色を呈する。

恵那山断層周辺では岩村町中富東方に分布する。層相は濃飛流紋岩の角礫を多く含む角礫層からなり,含有礫はクサリ礫化しており,マトリックスは赤色を呈する。

(A)中位段丘堆積層(trm)

中位段丘堆積層は,恵那盆地中の中津川など木曽川に向かって北西に流れる河川に沿って最もよく発達する。恵那盆地以外では瑞浪市稲津の小里川左岸に小規模な分布がみられるのみである。層相は美濃帯堆積岩類,濃飛流紋岩,花崗岩の礫を含む礫層で,礫は亜円礫が多い。本層のうち,M1面構成層とM2面構成層中の礫の一部はクサリ礫化しているのに対し,M3面構成層中の礫は硬質でクサリ礫化していない(写真11)。恵那盆地中の中津川市町裏北方ではM3面構成層上部に木曽川泥流堆積物が分布している(桑原:1973など)。中村ほか(1992)によると木曽川泥流堆積物の年代は約50kaである。

(B)低位段丘堆積層(trl)

低位段丘堆積層は屏風山断層周辺では小里川,佐々良木川,阿木川,中津川,落合川などに沿って分布し,恵那山断層周辺では肥田川,岩村川などに沿って分布する。露頭はほとんど認められない。

G土石流堆積層

土石流堆積層は主に川や沢に沿って分布する。屏風山断層や恵那山断層の前縁部に特に広範囲に分布する。現河床からの比高や地形面の開析の程度などから,下位から土石流堆積層(1)と土石流堆積層(2)に区分される。地形面区分と対比すると,土石流堆積層(1)はF1面,F2面,F3面,F4面の各土石流堆積面の構成層で,土石流堆積層(2)はF5面,F6面の各土石流堆積面の構成層である。

(@)土石流堆積層(1)(fd1)

土石流堆積層(1)は土石流堆積層(2)とともに屏風山断層前縁部に広く分布し,特に恵那盆地と瑞浪市大牧から大草にかけてよく発達する。恵那山断層周辺では,山岡町水口から中津川市飯沼にかけて,恵那山断層と川上断層の前縁部に分布する。本層のうち,F1面構成層の層相は含有礫がクサリ礫化した礫層(写真12)で,F2〜F4面構成層は一部の礫がクサリ礫化している。

(A)土石流堆積層(2)(fd2)

土石流堆積層(2)は屏風山断層や恵那山断層の前縁部に広く分布するほか,各沢筋などに小規模な分布がみられる。一般に角礫を含む礫層からなり,クサリ礫化はみられない。

H崖錐堆積層(dt)

山腹斜面の落石からなる堆積物や,崩壊などによる移動土塊からなる堆積物を崖錐堆積層とした。調査地の山腹斜面に分布する。

I氾濫原堆積層(rd)

氾濫原堆積層は現河床に分布し,主に礫層からなる。