ｔｉｔｌｅ

（２）リニアメントおよび変位地形
（ⅰ）屏風山断層

屏風山断層は変位地形の有無，リニアメントの明瞭さと連続性から南西部（長さ約１８ｋｍ）と北東部（長さ約１４ｋｍ）に区分される。

①屏風山断層南西部

屏風山断層南西部は瑞浪市稲津町小里から恵那市浜井場に至る約１８ｋｍ区間に判読される。小里川～飯沼川間に相当する。大地形的には隆起側であるリニアメント南東の山頂には土岐面とみられる小起伏面が断続的に分布し，断層北西側に分布する土岐面との高度不連続は明瞭である。

リニアメントは山地と丘陵地の境界部に，明瞭な傾斜変換線としてほぼ連続的に判読される。瑞浪市大草ではＦ３面，Ｆ４面，Ｆ５面がリニアメントを横断して分布するが，断層変位地形は認められない。同様に恵那市上畑，恵那市中切ではＦ３面，Ｆ４面，Ｆ５面，Ｆ６面がリニアメントを横断して分布するが，これらの土石流堆積面に断層変位地形は判読されない。恵那市西組および恵那市鍋山では，Ｈ１面がリニアメント通過位置でほぼ直線的な境界で山地と接する。当該区間北東端の阿木川～飯沼川にかけての約２ｋｍ区間は，低位段丘面（Ｌ２面，Ｌ３面）が分布し，断層変位地形は認められない。

このように，リニアメントは傾斜変換線や鞍部地形からほぼ連続的に追跡できるが，中位段丘面に相当するとみられる土石流堆積面に断層変位地形が認められないことから，ほぼ全区間でＣランク（表３－１－２－２リニアメント判読基準による）と判断される。

②屏風山断層北東部

屏風山断層北西部は恵那市浜井場～中津川市霧ヶ原南西に至る約１４ｋｍ区間に判読される。大地形的には隆起側であるリニアメント南東の山頂には土岐面とみられる小起伏面が断続的に分布し，土岐面の高度不連続は明瞭である。

リニアメントは山地と丘陵地の境界部に，明瞭な傾斜変換線としてほぼ連続的に判読される。断層変位地形は，中津川市中垣外南東でＦ２面，Ｆ３面に南東側隆起の撓曲崖や低断層崖が分布し，Ｆ１面がリニアメントを挟んで直線的な境界で山地と接する。リニアメントを横断するＦ４面，Ｆ５面，Ｆ６面に断層変位地形は認められない。

このように，断層変位地形が中津川市中垣外南東で認められることから，ユーグリーン中津川ゴルフ場から中津川沿い本州製紙工場までの約５ｋｍ区間をＡランクと判断した。恵那市浜井場からユーグリーン中津川ゴルフ場までの約２ｋｍ区間と，中津川沿い本州製紙工場から釜沢南西までの約３．５ｋｍ区間は，土石流堆積面など第四紀後期に形成された地形面がリニアメントを横断する地点が少なく断層変位地形が認められないものの，リニアメントは傾斜変換線として連続的に判読されることからＢランクと判断される。釜沢南西から霧ヶ原南西の約３．５ｋｍ区間は，緩やかな傾斜変換線，直線状谷，鞍部地形などの判読要素からなり，Ｃランクと判断される。

（ⅱ）手賀野断層

手賀野断層は中津川市手賀野から中津川市深沢を経て一方は恵那市後田，もう一方は恵那市万場へ至る長さ約７．５ｋｍ区間に判読され，段丘面や土石流堆積面に南東側隆起の断層変位地形が認められる。

中津川市深沢から中津川市手賀野にかけての長さ約４．５ｋｍ区間は，高位段丘面（Ｈ１面），中位段丘面（Ｍ１面，Ｍ２面，Ｍ３面），土石流堆積面（Ｆ１面，Ｆ２面，Ｆ４面，Ｆ５面）にほぼ連続的に南東側隆起の断層崖や撓曲崖などの累積的な断層変位地形が認められる。手賀野断層北東端では，Ｍ３面の南西半部の撓曲崖は明瞭であるが，Ｍ３面の北東半部では低断層崖様地形が２条に分岐しかつ不明瞭である。

恵那市後田から中津川市深沢に至る長さ約３ｋｍ区間は，恵那市後田で高位段丘面（Ｈ１面）に高度差が認められるものの，浸食や新規堆積物の埋積により断層崖などの変位地形は認められず，リニアメントは不明瞭である。

手賀野断層の南西延長部は阿木川による低位段丘面（Ｌ１面，Ｌ２面，Ｌ３面）が分布し，これらの低位段丘面に断層変位地形は認められない。北東延長部は中津川による低位段丘面（Ｌ３面）や四つ目川による扇状地面（Ｆ５面）が分布し，これらの地形面に断層変位地形は認められない。さらに，中津川を挟んだ約１．５ｋｍ北東の中津川市松田～上金に分布するＭ２面には断層変位地形が認められないことから，手賀野断層は中津川から四つ目川の間で終息しているとみられる。

また手賀野断層は恵那市万場から中津川市青木にかけて屏風山断層から分岐するように分布する。恵那市万場では飯沼川による低位段丘面（Ｌ２面）に低断層崖様の直線状の崖地形が認められ，恵那市万場から中津川市青木にかけては土石流堆積面（Ｆ１面，Ｆ２面，Ｆ４面，Ｆ５面）に断続的に低断層崖や撓曲崖様の地形が認められる。なおこの区間については東郷委員の空中写真判読結果を参考にさせていただいた。

上記事象からリニアメントは，中津川市深沢から中津川市手賀野にかけての長さ約４．５ｋｍ区間がＡランク，恵那市後田から中津川市深沢に至る長さ約３ｋｍ区間がＢランク，恵那市万場から中津川市青木に至る約３ｋｍ区間がＢランクと判断される。

（ⅲ）蕨平断層

蕨平断層は屏風山断層北東端の３００～８００ｍ北西側に分布する長さ約４ｋｍ区間に判読される。リニアメントは概ね山地と丘陵地の境界に遷緩線として判読され，中津川市蕨平でＨ２面に南東側隆起の撓曲崖様断層崖が認められる。リニアメントを横断するＦ４面に変位地形は認められない。北東延長部の霧ヶ原ではＭ１面に変位地形は認められない。リニアメントは落合川から温川区間では，Ｈ２面の変位地形の存在からＡランク，遷緩線からなる落合川以西は，Ｂランクと判断される。

（ⅳ）野久保断層

野久保断層は恵那盆地北東縁の木曽川右岸の中津川市梅平から中津川市野久保に至る長さ約３ｋｍ区間に判読される。リニアメントは北東－南西方向で概ね木曽川右岸の高位段丘面（Ｈ１面）と山腹斜面の境界に沿って分布する。中津川市梅平と中津川市野久保で約２００ｍの沢の右横ずれ様屈曲が認められる。中津川市野久保ではリニアメントを挟んで高位段丘面（Ｈ１’面）が分布するが，高位段丘面に鉛直方向の断層変位地形は認められない。

（ⅴ）恵那山断層

恵那山断層はリニアメントの明瞭さと連続性から南西部（長さ約１８ｋｍ）と北東部（約２４ｋｍ）に大別される。南西部と北東部の間の約１ｋｍ区間にはリニアメントは判読されない。

①恵那山断層南西部

恵那山断層南西部は土岐市柿野から瑞浪市陶町を経て山岡町原に至る長さ約１８ｋｍ区間において，山地と丘陵地の境界部に，傾斜変換線としてほぼ連続的に判読される。

土岐市鶴里町柿野中南方から土岐市住久保にかけての約７．５ｋｍ区間では，比高約１５０ｍの急傾斜地からなる大地形としての断層崖は明瞭で，リニアメントの連続性も良い。当該区間の第四紀後期の地形面は，土石流堆積面（Ｆ４面，Ｆ５面，Ｆ６面）や段丘面（Ｌ２面）が沢に沿って小規模に分布する。土岐市鶴里町柿野中南方で，リニアメント直下のＦ５面末端部に直線的な崖地形が認められる。土岐市八王子では，リニアメント直下でＦ５面が右横ずれ的な分布をなし，直線的な崖地形が見られる。土岐市大草ではＦ４面に低断層崖様の地形が認められる。土岐市住久保東方では３条の沢が系統的に約３０ｍ右横ずれ屈曲するほか，リニアメント沿いには屈曲様の地形がいくつか認められる。

瑞浪市土洞から瑞浪市陶町井ノ平にかけての約６ｋｍ区間では，リニアメントは連続する遷緩線，鞍部地形の連続として判読されるが，複数のリニアメントが雁行するように分布し，やや不明瞭である。当該区間では，土石流堆積面（Ｆ５面，Ｆ６面）や段丘面（Ｌ３面）などの第四紀後期の地形面が分布するが，これらの地形面に断層変位地形は認められない。

山岡町西原から羽佐間にかけての長さ約５ｋｍ区間は，比高１００～１５０ｍの明瞭かつ連続性のある断層崖として判読される。当該区間ではＦ４面，Ｆ５面，Ｆ６面などの土石流堆積面が分布し，Ｆ５面，Ｆ６面がリニアメントを横断して分布するが，これらの地形面に断層変位地形は認められない。山岡町羽佐間では，２条の沢の右横ずれ様屈曲がみられる。

上記事象から，土岐市鶴里町柿野中南方から土岐市住久保にかけての約７．５ｋｍ区間はＢランク，瑞浪市土洞から瑞浪市陶町井ノ平にかけての約６ｋｍ区間はＣランク，山岡町西原から羽佐間にかけての長さ約５ｋｍ区間はＢランクと判断される。

②恵那山断層北東部

恵那山断層北東部は山岡町田沢から岩村町岩村を経て上矢作町阿岳を通過し，長野県平谷村に至る長さ約２４ｋｍ区間（岐阜県側では長さ約１７ｋｍ）に判読される。

山岡町燈籠から岩村町石畑にかけての長さ約４ｋｍ区間では，リニアメントは山地と丘陵地の境界部に遷緩線として判読される。当該区間ではリニアメントは連続性に乏しく雁行し，不明瞭である。第四紀後期の地形面としてＦ５面，Ｆ６面などの土石流堆積面が分布するが，これらの地形面に断層変位地形は認められない。

山岡町水口から中津川市両伝寺南方にかけての長さ約６ｋｍ区間は，恵那山断層前縁にリニアメントが判読され，その北東延長部は川上断層に連続する。当該区間では，Ｆ３面，Ｆ４面，Ｆ５面，Ｆ６面などの土石流堆積面や，Ｈ１面，Ｌ２面などの段丘面が分布する。岩村町富田では岩村川右支川の扇状地面として広がるＦ４面に明瞭な低断層崖が分布する。岩村町水口ではＦ４面に低断層崖様の崖地形が認められ，岩村町石畑ではＦ３面，Ｆ４面に低断層崖様の崖地形が認められ，岩村町中富東方ではＨ１面に断層崖様の崖地形が認められる。Ｆ５面，Ｆ６面，Ｌ２には，変位地形は認められない。

岩村町岩村から三森山北方の長さ約４ｋｍ区間では，リニアメントは傾斜変換線と鞍部地形などの判読要素からなる。リニアメントに沿って土石流堆積面（Ｆ２面，Ｆ３面，Ｆ４面，Ｆ５面，Ｆ６面）が分布し，Ｆ５面，Ｆ６面はリニアメントを横断して分布するが，これらの地形面に断層変位地形は認められない。

三森山北方以東の長さ約８ｋｍ区間では，リニアメントは不明瞭な傾斜変換線と鞍部地形などの判読要素からなる。リニアメントに沿って第四紀後期の地形面は判読されない。

上記事象から，山岡町燈籠から岩村町石畑にかけての長さ約４ｋｍ区間はＣランク，山岡町水口から中津川市両伝寺南方にかけての長さ約６ｋｍ区間はＡ（～Ｂ）ランクと判断される。また岩村町岩村から三森山北方の長さ約４ｋｍ区間はＢランク，三森山北方以東の長さ約８ｋｍ区間はＣランクと判断される。

（ⅵ）猿投山北断層

猿投山北断層は愛知県豊田市広幡町から土岐市曽木町北方に至る長さ約２１ｋｍ区間（岐阜県側では長さ約１１ｋｍ）に判読される。リニアメントは山地と谷底平野の境界部，直線状谷，尾根・谷の１００～２５０ｍにわたる右横ずれ屈曲などが判読され，全体に明瞭である。

柿野温泉北方では約２５０ｍの沢の右横ずれと，北西側隆起の断層変位により沢の閉塞が認められる。新陽カントリークラブゴルフ場では約１００ｍの尾根の右横ずれ屈曲が認められる。郷之木北方では約１５０ｍの沢の右横ずれ屈曲が認められる。リニアメントの北東端は小里城跡南方で終息しており，北東延長部に分布する屏風山断層には連続しない。

このように，リニアメントは主に右横ずれ断層変位地形が断続的に認められることから，ほぼ全域にわたりＡランクと判断される。

（ⅶ）飯沼断層

飯沼断層は中津川市北谷から飯沼にかけて湾曲するものの長さ約３ｋｍ区間に判読される。

飯沼断層周辺には，東方に分布する川上断層崖から供給された土石流堆積面（Ｆ２面，Ｆ３面，Ｆ４面，Ｆ５面，Ｆ６面）が分布し，大局的には西側傾斜の地形面が発達する。これらの土石流堆積面のうち，Ｆ２面には西側隆起で比高１０～２０ｍの逆向き断層崖が約７００ｍにわたり連続する。一方，中津川市大野ではＦ４面およびＦ５面がリニアメントを横断して分布するが，これらの地形面に断層変位地形は認められない。

上記事象から中央部約１ｋｍ区間はＡランクと判断される。ただし，飯沼断層の北部および南部では，リニアメントを挟んで同一基準面となる地形面が分布しないことから，Ｂランクと判断される。