4−3−3 現況地形と地質構造との関係

トレンチ調査に先立ち、調査地域周辺の現況の微地形を保存する目的で実施した平板測量結果を平面図として付図2に、断面図として付図3に示す。

付図2では、§3地表踏査(精査)結果で述べた微地形が表現されている。図面左上から右下(北から南)に流れ下るチャネルを挟んで、右上(東)と左下(西)に地形的な高まりがみられる。右上の高まりはH5(p.3−4)の微高地である。H5微高地の比高はおおむね0.6〜0.7mである。小さな沢の南西側にも一部林道によって改変されているものの、さらに小さな微高地(以下、小微高地)がみられる。比高は、約0.5mである。

詳細にみると、北西から南東へ流れ下ってきたチャネルはH5微高地にぶつかり、H5微高地に沿うように北から南に方向を若干変えて3m程度流れた後、再び方向を変えて北西から南東へ流れ下っている。緩い逆S字型に屈曲しており、H5微高地を回り込んでいる。

また、図面左側(北西)および左下(西)から延びてくる高まり(p.3−8)は表層の移動(すべり?)と考えられたものである。付図3の地形断面No.1で表現されている。

トレンチ調査の結果、これらの微地形と地質構造との関係が明らかになった。付図2(部分)にトレンチ調査位置および各トレンチ壁面に出現した断層を投影したのが図4−5である。

No.4トレンチの南東側、No.2トレンチはH5微高地の西〜南西側に、No.1トレンチの南東側は小微高地に位置している。トレンチ調査の結果、いずれも断層の南東側に位置し、主としてE層が分布するのが明らかになった。E層の最上部にはロームあるいはローム質な堆積物が分布しており、トレンチ底には基盤岩や基盤岩の破砕帯が認められた。

一方、No.4トレンチの北西側、No.3トレンチ、No.1トレンチの北西側は、H5微高地および小微高地の北西側にひろがるごく緩やかに南東へ傾斜する斜面に位置している。トレンチ調査の結果、いずれも断層の北西側に位置し、主としてD層が分布するのが明らかになった。微高地の北西側に分布しているD層の上位には湿地性のA−a層が分布していた。逆S字型に屈曲しているチャネルは、この湿地性のA−a層をわずかに刻んで流れていた。

B層は、図4−5左側(北西)から延びてくる高まりに対応することから、先述の表層の移動(すべり?)と考えられた高まりは、土石流堆積物の末端と考えられる。

また、No.1トレンチにのみ分布する腐植質なC層は、現況の地形とは関係なくチャネルの南西側に分布している。しかし、ローム質なC−b層は主として断層の南東側の小微高地を構成する地層の最上部を占めており、下位のE層同様の傾向が認められた。一方、腐植質なC−a層は主として断層の北西側の、現在の湿地性堆積物であるA−a層の下位に分布しており、上位のA層と同様の傾向が認められるなど、現在の地層分布と同様の傾向が認められた。C層の下部の浅いU字状をなす堆積物(C−c層およびC−d層)は北東から南西方向へと断層に沿って分布する可能性が高く、現在のチャネルとは異なる延びを持つと思われる。

図4−5 断層位置平面図