No.4トレンチNE面では、壁面ほぼ中央のグリッド4.0〜4.1において、トレンチ底から20cm上までは、わん曲する明瞭な1枚の面を境にして、D層と基盤岩の破砕帯が接しているのが確認できた。境界面に沿って小礫の長軸方向が境界面に平行になっているのが認められた。また、この面の上方への延長上では、F層と基盤岩の破砕帯が接しているのが確認できた。ほぼ垂直で、明瞭な1枚の面である。境界に沿う礫の配列の乱れや、再配列などは認められなかった。これらの面は、基盤岩の破砕帯と接していることから、断層である。
断層はトレンチ底付近では基盤岩の破砕帯とD層の境界をなし、トレンチ底より20cm上から80cm上までF層と基盤岩の破砕帯の境界をなす。ほぼ垂直な断層である。
この断層は、SW面からトレンチ底面をへてNE面に連続するのを掘削時に確認しているので、SW面同様F4断層とする。トレンチ底から80cm上より上方では、指交関係にあるE−a層もしくはF−g層に覆われていた。
地層の記載の項で述べたように、F層は全体として上に開いたくさび状の形状をし、堆積物は壁面で観察されるいずれの地層とも対比できない。F層内部はブロック状のまとまりを持つ様々な層相の堆積物がモザイク状に配置されている。通常の堆積では考えられず、何らかの変形を受けている可能性が高いと思われる。そのためF層全体を断層による変形帯と考えた。
F層全体が断層による変形帯と考えられることから、D層とF層の境界も断層と考えられる。この境界はグリッド4.1〜5.1にかけて、南東に傾斜しており、トレンチ底から20cm上方から表層土であるA−a層の直下まで認められる。この境界は一つの面としては捉えることができないが、F5断層とみなす。この断層は、直接はNE面に連続していないが、F層とD層との境界をなすという断層の性格からSW面同様F5 断層とした。
断層の北西側に分布するD−b層は、F5断層の近傍の幅約70cmぐらいが、F5断層に平行に南東に明瞭に撓んでいるのが認められた。
また、F層内部も各層の配置や形状からみて、断層(F6断層)によって切られている可能性が高いと思われる。しかし、F6断層も断層面としては認識はできなかった。なお、F層内部の構造については、SW面におけるF層の構造と合わせて、後述する。
写真4−9 No.4トレンチNE面 断層近傍