(5)No.4トレンチSW面の断層

写真4−8

No.4トレンチSW面では、壁面ほぼ中央のグリッド3.3〜3.7において、壁面のほぼ中央までは、高角度に南東に傾斜する明瞭な1枚の面を境にして、D層とE層が接しているのが確認できた。この面をD層とE層の境界としたのは、この面を挟んで両者の間には固結度、基質の粘土・シルトの含有量、ローム層の有無などの差異が認められたからである。境界面に沿って小礫の長軸方向が境界面に平行に立っているのが認められた。

No.1トレンチSW面の断層の項で述べたようにD層、E層の地質的特徴を考慮すると、No.4トレンチSW面においても形成時期の異なるD層とE層が高角度の面で接していることになる。また、境界より南東側のE層の下位には基盤岩の破砕帯がみられるが、北西側のD層の下位にはみられない。以上のような地質構造から、D層とE層の境界は断層と考えた。

また、この面の壁面ほぼ中央より上方への延長上では、F層とE層が接しているのが確認できた。この面をF層とE層の境界としたのは、この面を挟んで両者の間には固結度、地層の堆積構造などに明瞭な差異が認められたからである。境界は、下半部同様高角度に南東に傾斜する明瞭な1枚の面である。境界に沿う礫の配列の乱れや、再配列などは認められなかった。

地層の記載の項で述べたように、F層は全体として上に開いたくさび状の形状をし、堆積物は壁面で観察されるどの地層とも対比できない。F層内部はブロック状のまとまりを持つ様々な層相の堆積物がモザイク状に配置されている。通常の堆積では考えられず、何らかの変形を受けている可能性が高いと思われる。そのためF層全体を断層による変形帯と考えた。したがってF層とE層の境界も断層と思われる。

断層はトレンチ底付近では基盤岩の破砕帯とD層の境界をなし、トレンチ底より約15p上からは壁面ほぼ中央までD層とE層の境界をなす。壁面ほぼ中央からはF層とE層の境界をなし、A層の直下まで達している。この断層をF4断層とする。

断層の南東側に分布するE−b層の下部は、F4断層の近傍の幅40cmぐらいが、F4断層に向かって引きずり込まれたように明瞭に撓んでいた。また、断層の北西側に分布するD−a層、D−b層は、F4断層に向かってごく緩やかに南東に傾斜している。

一方、F層全体が断層による変形帯と考えられることから、D層とF層の境界も断層と考えられる。この境界はグリッド3.5〜4.5にかけて、ごく緩やかに南東に傾斜しており、壁面のほぼ中央から表層土であるA−a層の直下まで認められる。比較的明瞭な面をなす。この断層をF5断層とする。

なお、F層内部の構造については、NE面におけるF層の構造と合わせて、後述する。

写真4−8 No.4トレンチSW面 断層近傍