平成10年度の調査結果において、牧ヶ洞断層に関しては2地区で、新しい堆積物に変位を与えている可能性が指摘され、変位地形が多く認められていた。この内、「清見村大倉滝地区」では、山間の狭長な小盆地に、前述したように分離した小丘が認められ、小丘間を埋積する谷底堆積物上に水系の右横ずれ屈曲と南上がりの断層崖とみられる低崖が認められている。
したがって、この地域からは、牧ヶ洞断層の断層位置・性状、活動性に関する新知見が得られる可能性が高いと判断し、「清見村大倉滝地区」を選定した。
牧ヶ洞断層の長期的な地震発生の可能性について評価を行い、地震防災対策上に必要な基礎資料を得るには、平均変位速度・最新活動時期・単位変位量および地震再来間隔などの活動性を明らかにする必要がある。
そのため、断層位置・性状、活動性(平均変位速度・最新活動時期・単位変位量・地震再来間隔)を把握することを調査の目的とし、地表地質踏査(精査)、トレンチ調査、年代測定などの調査方法を組み合わせた。
地表踏査では、断層位置・性状、破砕帯の有無を調査し、断層の性状を明らかにする。また、断層周辺の微地形を調査し、断層による変位地形、変位量を明らかにし、活動性(平均変位速度・最新活動時期・単位変位量・地震再来間隔)を求める。
トレンチ調査では、断層位置・性状(変形、変位量)を明らかにするとともに、年代測定を実施して、その活動性(平均変位速度・最新活動時期・単位変位量・地震再来間隔)を明らかにする。
また、調査対象地域である「清見村大倉滝地区」周辺は高精度の地形図がない。牧ヶ洞断層による変位地形の形状(分離丘・微高地、チャネルの右横ずれ屈曲、凹地化した湿地帯など)を詳細に調査し、活動性(平均変位速度・最新活動時期・単位変位量・地震再来間隔)の諸元を明らかにするには、縮尺S=1/500程度の大縮尺の精密な地形図が必要である。そのために空中写真の図化を実施した。
調査実施項目および数量、その目的について表2−2に示す。
表2−2 調査実施数量一覧表
なお、調査実施地域の詳細な選定は、平成10年度の概査報告書を基に地表踏査を行い決定した。