5−7−2 空中写真判読結果

1万分の1空中写真判読で認められたリニアメントについて東側のものより仮称番号をつけて図5−34に示す。なおリニアメント1とリニアメント2の分布域については,地形面を区分し図5−35を作成して示した。

1) リニアメント1

高山市滝町根方地区の東西方向の直線的な谷とその北側の山地境界部に,高度不連続線として認められる。なお上宝火砕流分布域では,山腹斜面の崩壊が著しく,リニアメントの鮮明さに欠ける。なおリニアメント1の東端付近では南側の短いリニアメントに右雁行するように伺える。

2) リニアメント2

リニアメント1の西側に右雁行の関係で認められる。島津神社の東側の南流する谷は,リニアメントとの交叉部で10m弱の右屈曲が認められる。この谷の西側約500mの沢は,中位段丘と扇状地面を深く開析し,約100mの右屈曲を示している。同様な傾向は,さらに西側700mの間にも認められ,系統的な河谷・尾根の右ずれ屈曲が明瞭に認められる。屈曲した尾根には風隙と見られる鞍部が存在する。

なお島津神社東側の沖積低地は閉塞された形状を示し,その南側には風隙(旧河道跡)が認められるが,これらの断層運動との関連については不明である。

3) リニアメント3

リニアメント3はリニアメント2の西側に長さ約1qで認められ,東側で山地斜面上の小さい谷に右屈曲が認められるとともに,その西側で山地斜面の高度不連続が認められる。

4) リニアメント4

リニアメント4は大八賀川の西側に長さ約0.8qで認められるもので,3本の河谷と隣接する尾根に屈曲量約150〜200mの明瞭な右屈曲が認められる。ただしリニアメント3とリニアメント4間を横断する大八賀川にこの屈曲量に対応するような大きな屈曲は認められず,リニアメント4による屈曲量を過大に評価している可能性がある。なお,大八賀川右岸に分布する低位段丘面は北側に向かって低下する撓曲変形のように見られるが,ここの1か所のみであり確実性に欠ける。

リニアメント1〜リニアメント4はそれぞれ雁行する関係にあるが,巨視的には概ね連続したリニアメントとしてみなすことができる。しかしながら次に示すリニアメント5〜リニアメント7は塩屋町南〜上江名子町南で3本に分岐するリニアメントである。

5) リニアメント5

リニアメント5は前期ないし中期更新世の礫層や火砕流堆積物からなる丘陵部に,断続的に北側低下を示す高度不連続が認められる。ただし,丘陵間の沖積低地や扇状地面には変位を与えていない。なお,鹿野勘次(1983)では江名子礫層の撓曲変形(南東側隆起)が報告されている。

6) リニアメント6

リニアメント6は山地斜面の高度不連続と鞍部の存在から判読したものであるが,明瞭さに欠ける。

7) リニアメント7

リニアメント7は不明瞭ながら判読されるもので,東側では山地高度不連続線として認められる。

8) リニアメント8

リニアメント8は宮村北部から高山市南部にかけて宮川が狭窄される東側の山地斜面に位置し,やや不明瞭なリニアメントである。このリニアメントは宮川断層に属する可能性も考えられるが,江名子断層のリニアメント7との位置関係から江名子断層のものに含める。

リニアメント5,6及び7は,丘陵地を構成する地質と南側の山地を構成する美濃帯との地質境界と概ね一致している。

図5−34 リニアメント分布と地形面区分図(縮尺1:50,000)

図5−35 変位地形の記載(縮尺1:5,000)(江名子断層・滝町付近)