5−4−2 空中写真判読結果

1万分の1空中写真判読で認められたリニアメントについて北東側のものより仮称をつけて図5−18に示す。

図5−18 リニアメントの分布と地形面区分図(縮尺1:50,000)

1) リニアメント1

高山下赤保木町より前原谷(東谷)伸びる長さ3.5qのリニアメント1は,山地斜面の高度不連続線して認められる。ただし扇状地面(Fd1)と牧草地(人工改変を受ける)でリニアメントは不鮮明となる。

2) リニアメント2

前原谷(西谷)より県営種畜場を経て清見村牧ヶ洞に伸びる長さ約2.6qのリニアメント2は,以下の変位地形若しくは変位を受けている可能性がある地形が認められる。

・前原谷(西谷)の東側尾根部に凹地状の断層鞍部が認められる。

・前原谷(西谷)との交叉部において左岸側に分布する扇面に遷緩線が認められる。 

・県営種畜場付近には,南東傾斜の広い扇状地が広がっている。

しかし,その扇端部は北東−南西方向の山地によって遮られており,扇状地全体が山地中に閉塞した形状で分布している。扇端部付近の地形は,凹状の地形をなしており,凹地と山地の比高差は20〜30mである。

ここに認められるリニアメントは図5−19に示すように,崖の高さが10m以下の南上がりの崖が概ね直線的な配列をなし分布する。

D地点では,扇面上に高さ1〜2mの低崖が認めらる。低崖の南側の面は,北西側の扇面(Fd1)と同一の地形面のように判読され,北斜面を示している。もともとの地形を保っているとすれば南側隆起の断層運動によって逆むきの低断層崖が形成されたものと判断される。また谷沿いに分布する新しい扇面(Fd2)には低崖は分布しないように判読される。

なお県営種畜場と牧ヶ洞周辺の牧場では多少なりとも人工改変がなされており,低崖が人工改変によるものである可能性も考えられる。

3) リニアメント3

リニアメント3はリニアメント2の南側約500mに並行するように長さ2q分布する。ただし西側で山地斜面の高度不連続が認められるものの鮮明さに欠ける。

4) リニアメント4

リニアメント4は清見村大洞より同大野平にかけて長さ約13qで分布する。リニアメント4の大部分は山地中に分布しており,河谷・尾根の200m程度の右ずれが発達する。滝ヶ洞山の南東側約1.5q,大倉滝の上流500mの狭長な小盆地には,分離した小丘がリニアメント方向に連続して分布している。河田清雄(1982)の中では次のように記載されている。

「大倉滝上流にある小盆地では,盆地北西縁が直線崖で,新鮮な三角末端面が形成 されている。崖の前縁には北東−南西に伸びる鞍部を介して3つの分離した小丘が 存在する。これは,北西から南東へ伸びていた小規模な尾根が断層で右横ずれに変 位し切断・分離されたものであろう。」

この地点の変位地形の状況について図5−20と以下に示す。

@分離した小丘はごく小規模なものも含めると4つ認められ,その高さはおおよそ30〜5mである。

A小丘間は谷底堆積物によって埋積されており,小さな谷と微高地が認められる。

微高地の北西端部には,高さ1m程度の北西側低下を示す低崖が直線的な配置で認められる。

B小丘間を流下する谷は,上記の低崖付近でわずかながら右屈曲するように判読される。

C小丘の北東側にも低崖が認められる。ただし南西へ流下する水系による浸食崖若しくは林道構築時の人工的な崖の可能性も考えられる。

なお,小盆地の東端部は東側の谷によって開析されている。小盆地側へ谷底堆積物を供給したと見られる北側の谷は,東側から伸びる谷によって河川強奪されたものと推定される。

リニアメント4が小鳥川を横断する地点では,河田(1982)の中で次のように記載されている。

「小鳥川最上流部では,断層の北側(下流側)で急に東側へ谷幅が広がり,この谷が右横ずれに約500m屈曲していることを示している。」

なお,小鳥川左岸側の低位段丘面上に,リニアメント4のほぼ延長上に高さ約数mの南低下の低崖が認められる。単なる浸食崖の可能性もあるが,低崖位置で河川が閉塞した形態をとることと,低崖がリニアメントの延長上に位置することを考え合わすと何らかの変位を受けている可能性が考えられる。

図5−21で示される河谷の右ずれ屈曲は,リニアメント4の明瞭な区間の南西端に当たり,さらに南西側では山地斜面の高度不連続線として認められ,鮮明さにやや欠ける。

5) リニアメント5,リニアメント6

六厩地区北側に1q程度と短く分布するもので,概ね東西方向を示す。

6) リニアメント7

新軽岡峠の西側山地斜面に高度不連続線として認められる。

図5−19変位地形の記載(縮尺1:5,000)(県営種畜場付近)

図5−20 変位地形の記載(縮尺1:5,000)(大倉滝の上流500mの狭長な小盆地付近)

図5−21 変位地形の記載(縮尺1:5,000)(リニアメント4が小鳥川を横断する地点付近)