5−1−2 空中写真判読結果

数河断層に沿って1万分の1の空中写真判読結果,4万分の1の空中写真判読結果で認められた山麓基部のリニアメント(リニアメント1と呼ぶ)の他に,長さ1〜2kmの短いリニアメントがその両側や延長部に3本認められた。リニアメント1の西側延長部のものをリニアメント4,南側のものをリニアメント2.3と仮称する(図5−2図5−3)。

各リニアメントについて以下に記載する。

1) リニアメント1は,山麓基部に認められ,神岡町梨ケ根より古川町下数河まで約10kmにわたって,概ね山地斜面の高度不連続線として緩やかに湾曲しながら連続して分布する。しかしながら,このリニアメント沿いでは,空中写真判読と現地踏査でも谷部に分布する扇状地堆積物を確実に変位させている箇所は認められない。

2) リニアメント2は,流れ葉スキー場から数河スキー場にかけて約1kmの長さで分布する。河谷の小さな屈曲が2箇所で認められる。また,山地斜面の高度不連続が認められる。

3) リニアメント3は,上数河から下数河にかけて約2kmの延長で扇状地面から山地斜面に連続して認められる。扇状地面上のリニアメントは,異なる扇面の境界付近,すなわち扇面の傾斜変換点を連続して結んだ線状構造の可能性が高い。しかしながら西側の山地斜面上に分布するリニアメントは,河谷の屈曲と截頭谷が密に認められ,さらに尾根の屈曲も認められる。その連続性からみて右ずれの断層変位を示しているものと推定される。

4) リニアメント4は下数河両側の山麓基部に長さ1kmで短く分布し,その明瞭度も弱い。河川及び尾根の小規模な屈曲と南低下を示す山地斜面の高度不連続として認められる。途中,松尾白山神社の北西100mに分布する扇状地面を横断する箇所では,古い扇面に高さ3m,長さ20m程度の低崖が認められ,崖の位置と方向及び低下側がリニアメントと一致するため,低断層崖である可能性が高いものと推定される。ただし,この低崖の形成は,地すべり頭部の滑落崖や異なる堆積物の地層境界に相当することも推定され,確実に低断層崖と判断するまでには至らない。また,谷沿いの新しい扇面には崖は認められない。

なお,活断層研究会(1991)によると,数河断層の西方延長は,小谷地区まで伸びているが,この地区のリニアメントは非常に不明瞭なものである。