調査地の最も特徴的な地形は,高山市の南約6kmを北東−南西方向に延び,水系を太平洋側と日本海側に分かつ標高1000〜1600mのほぼ平坦な山稜を呈する位山分水嶺の存在である。この分水界によって飛騨川は南流し,宮川は北流している。
図3−1 調査地付近の地形(日本列島の地質編集委員会,1995に加筆)
地形的には以下のように概観できる(図3−2)。
@宮川に沿った一之宮〜高山〜古川地区の中・小盆地の地域。
A高山盆地の東方から久々野町付近に跨るのなだらかな山地。
B神岡町の南西部〜古川町の東部におよぶ600〜1200mの高原状や台地状の地形。
C調査地西部の清見村に見られる標高1000〜1300m程度の定高性の山地。
D他に古川町の北部以北,朝日村,馬瀬村付近の急峻な山地。
なだらかな山地は,東部から北東部の地域や南西部では火山噴出物による緩斜面や山頂として形成されているが,西部や南部の地域では濃飛流紋岩類などの浸食の進んだ高原性地形が多くなる。丘陵地は高山盆地の南東部と北東部(小八賀川流域)や西部(川上川の出口付近),及び久々野町の飛騨川流域にまとまって分布する。これらの地域は,鮮新世〜中期更新世の礫層や火山噴出物などで構成される。
段丘や扇状地及び沖積地は,調査地域では極めて分布が少ない。河岸段丘の分布地域は,図3−3に示すように主に神岡町船津付近の高原川,小鳥川支流の黒内川,小八賀川,久々野町小屋名付近の飛騨川に散見される。これらは中位〜高位面に相当すると思われる。神岡町の段丘は磯ほか(1980)によって5面に区分されている。久々野町の段丘は現河床からの比高が50m程度である。山田ほか(1985)は「高山図幅」地域の段丘として,飛騨川流域に高位段丘と低位段丘をそれぞれ2段以上認めている。他に戸市川,宮川,小鳥川,川上川,大八賀川,気良川,吉田川,馬瀬川などの主要河川の蛇行箇所に,現河床からの比高5〜10m程の低位段丘が部分的に小規模に見られる。
扇状地の分布は比較的広い地域として,船津から戸市川,高山市新宮町,一之宮付近の山脚の緩斜面に見られ,小規模なものは谷の出口に随所に分布する。
沖積地は比較的広い範囲の地域として一之宮・高山・古川の宮川沿い及び高山の川上川沿いに見られる。他に小規模な沖積地は荒越川,小八賀川,大八賀川,飛騨川沿いに分布する。
河川や山稜の配列は宮川以東において,東西方向〜東北東方向及び南北方向が目立つ。この北側になると北東寄りに次第に変わる。宮川以西では東北東や北東方向が卓越し,南になると北北東から南北方向になる。位山分水嶺以南の地域は,阿寺断層の影響からか南北方向の配列が多い。このように,河川や山稜の配列は宮川と位山分水嶺を境に特徴が異なる。このような配列は活断層や基盤岩中の断層の方向とほぼ同様で,断層運動の影響を受けたことが推定される。
図3−3 段丘及び沖積地の分布域(日本列島の地質編集委員会,1995)