トレンチ東端部では、各地層の基底面の傾斜が上位から下位に向かって大きくなっているように観察される。各地層の基底面の傾斜角度を北壁面と南壁面についてスケッチ図より求めて図7−2に示した。この図より、E(1)層基底面とF(1)層基底面の間と、J(1)層基底面とK(1)層基底面の間には傾斜角度が変化していることが読みとれる。C(1)層が大きく変形していることと地層の傾斜角度に不連続性が認められることより、変形の時期は、C(1)層とF(1)層の間で、なかでもE(1)層基底面とF(1)層基底面の間の可能性が高い。地層の傾斜角度が断層活動によるものとするならば、J(1)層基底面とK(1)層基底面の間に活動した可能性もある。
2) トレンチ−2では、断層F−1(2)とF−2(2)が認められた。断層F−1(2)は、A(2)層中の下部では礫の再配列が明瞭に認められるが、A(2)層の上部で不明瞭となる。少なくともC(2)層は切られていない。B(2)層では肉眼的には認められなくなる。従って、断層F−1(2)の活動時期は、A(2)層堆積中、もしくはA(2)層堆積以降、C(2)層堆積以前と考えられる。
断層F−2(2)は、A(2)層からE(2)層をまでを明瞭に切断している。この断層の上端は2(2)層や4(2)層で覆われている。従って、断層活動は、E(2)層の堆積以降及び2(2)層で埋められる以前と判断される。
E(2)層の14C年代値は、1,320±70y.B.Pである。2(2)層は江戸時代末期〜明治時代初期に造られた水路の底部に敷いた粘土とそれを埋めた土からなる。
また、この断層F−2(2)には、後述する各層の基底面の変位量からA(2)層堆積後、C(2)層堆積前にも活動した可能性がある。
3) トレンチ−3ではF−1(3)とF−2(3)及びF−3(3)の3本の断層が認められた。このうち、断層F−3(3)は確実にD(3)層を切断し、H(3)層で覆われている。このことより断層F−3(3)の活動時期は、D(3)層堆積以降、H(3)層堆積以前である。D(3)層の14C年代値は13,650±230y.B.Pが得られた。H(3)層の年代値は特定できない。
4) 図7−3に断層活動時期のまとめ図を示す。トレンチ−2ではF−1(2)とF−2(2)が認められ、少なくとも2回以上の断層活動があったと判断されるが、その活動間隔は特定できない。
トレンチ−1では断層活動の証拠が認められないため活動時期は読みとれない。また、トレンチ−3でも複数の活動時期が特定できないため活動間隔が読みとれない。ただし、トレンチ−1において、図7−2に示す地層の堆積面の傾斜角度の変化を断層活動に起因すると仮定した場合には、活動間隔は、F(1)層とI(1)層の年代値の差よりは大きくなる。この間のF(1)層とI(1)層では14C年代値が得られており、その年代差は870年である。よって、活動間隔は少なくとも870年よりは長いと判断される。
図7−2 トレンチ−1における地層基底面の傾斜角度
図7−3 活動時期のまとめ図