断層の東側にあたる片山地区で実施したボーリング調査の結果によると、深度104.60m(標高−89.52m)以深の玉石混り砂礫からなる地層は、反射法弾性波探査における標高−20m〜−50m付近に認められる明瞭な反射面に対比される。この反射面は、池田山断層の下盤側では断層の直下まで連続して認められる。ただし、断層の上盤側ではこれに相当する反射面は認められない。
ここで下盤側の明瞭な反射面に着目すると、池田山断層の直下で上方に向かって標高+75mまで急激に立ち上がる構造が読みとれる。また、断層直下から東側に向かって急に深くなり、断層より約250m東側でほぼ水平となる。この間の反射面の高度差は125mである。これは断層の引きずりに伴う下盤側での上下変位量とみなされる(図7−1参照)。
また、この反射面に対比される深度104.60m以深の地層は、層相と上位に分布する地層の14C年代測定結果及び既存文献資料から濃尾平野における第二礫層に対比される。すなわち、深度104.60mは熱田層の基底面とみなせる。熱田層の基底面は15万年前頃と見積もられている(土質工学会中部支部,1988)。
このことと反射面の高度差をもとに、池田山断層の下盤での上下変位速度を求めてみると、0.8m/千年となる。
また、深度43.00〜44.70mに分布する熱田層上部に対比される地層の年代は、37,220±560y.B.Pが得られた。地層が水平であると仮定すると、熱田層の層厚は約60m、その年代差は約12万年であることより平均的な堆積速度は0.5m/千年と求まる。下盤側の上下変位速度と堆積速度はオーダー的には一致している。
図7−1 第二礫層上端面の断層下盤側における変位量