深度43.35〜43.43mにおいては、ハンノキ属(Alnus)が高率に占め、針葉樹林のスギ−ヒノキ科(Cryptomeria japonica)、コウヤマキ属(Sciadopitys)、イチイ科−イヌガヤ科−ヒノキ科(Taxaceae−Cupressaceae−Cephalotaxaceae)、トウヒ属(Picea)、ツガ属(Tsuga)が比較的高率に占め、ハンノキ属を除く広葉樹は稀であ る。また、カヤツリグサ科(Cyperaceae)が多産し、タニキモ属(Utricularia)、ミズユキノシタ属(Ludwigia)などの水生植物やミズゴケ属(Sphagnum)を伴う。
このように、この試料では温帯針葉樹のスギ・コウヤマキ属・イチイ科−イヌガヤ科−ヒノキ科が比較的多く占め、ツガ属及びトウヒ属などの針葉樹を伴うこと及び暖温帯林要素を伴わないことから、冷涼で湿潤な環境にあったものと推定される。また、低地ではカヤツリグサ科を主とし、ミズユキノシタ属やガヌキモ属を伴う湿地が形成され、ハンノキ湿地林も広がっていたとみられる。
一方、1試料と極めて少ない資料であることから、正確な層序対比はできないが以下の可能性が指摘できる。すなわち、この試料は、スギやコウヤマキ属などからなり、アカガシ亜属(Cyclobalanopsis)及びサルスベリ属(Lagerstroemia)などの暖温帯林要素を伴わない特徴から熱田層上部(濃尾平野第四系研究グループ、 1977;吉野ほか、1980)に対比される可能性がある。しかしながら、試料が少ないことから断定はできない。
表6−3 深度 43.35〜43.43mの試料から出現した花粉化石の組成表
図6−4 花粉分析図
写真6−1 深度43.35〜43.43mの試料から出現した花粉化石