4−5 鹿島町栃窪地区

空中写真判読結果によると, 真野川右岸においてL2 面上に, 真野川左岸においてL1 面上に,それぞれ低崖が認められる(図4−19)。

地表踏査結果によると,空中写真により判読されたこれらの低崖は,いずれも断層の位置と対応していることから,低断層崖である可能性が高い(図4−20)。

真野川右岸のL2 面にみられる低崖の直下において, 鈴木・小荒井(1989)等により西側の中新統の塩手層と東側の上部ジュラ系〜下部白亜系の相馬中村層群との境界部に断層が確認されており, 断層は段丘堆積物基底面に鉛直約1.2mないし約1.3m東落ちの変位を与えている(図4−21)。鈴木・小荒井(1989)は,この段丘堆積物基底面の鉛直変位量を双葉断層の最新活動における1回当たりの変位量とみなしている。また,鈴木・小荒井(1990)は, 断層露頭の上流約200m地点における同一堆積物上部から腐植質土壌層を採取して,3,740±120y.B.P. の14C年代値を報告し(図4−22),双葉断層の最新の活動年代は約3,700y.B.P. 以降としている。

鈴木・小荒井(1990)が14C年代測定試料を採取した地点から約45m下流の露頭においては, 亜円〜亜角の大〜巨礫を主とする段丘礫層及びそれを覆う細粒堆積物が分布する(図4−23)。両者の間には埋没土壌が認められ, 上位の地層は埋没土壌及び下位層を削り込んでいることから, 両者には年代差があるものと判断される。埋没土壌より上位の堆積物は砂層, 細礫層等の細粒堆積物を主とすること, 腐植層及び土壌化層を挟在することから背後の支流から供給された扇状地性の堆積物と考えられる。これらのことから,「扇状地性の堆積物」と断層との直接の関係を明らかにすることを目的に, 真野川右岸の断層直上の図4−24に示す位置において, ピットを掘削し, 表層部の地層の年代, 変位状況の確認を行った(今年度ピット,栃窪南地点)。ピット調査結果は次章で述べる。

また,本地点においては,支流堆積物がチャネル状に分布することが期待されることから,本地点においてトレンチを掘削することにより横ずれ量を確認できる可能性がある(平成9年度調査候補地点6)。

真野川左岸においてはL1 面上に低崖が認められ(図4−25), この低崖の地形測量結果から求めた鉛直変位量は約4m〜約3mである(図4−26)。この面は, 堆積物を覆うローム層下部から大山倉吉軽石層(約5万年前)が検出されることから, 少なくとも5万年よりも古いものと判断され, 双葉断層の約5万年前以降における累積鉛直変位量は約4m〜約3mとなる。本地点においては,低崖の比高が比較的大きいことから複数回の活動履歴を明らかにできる可能性がある(平成9年度調査候補地点7)。

一方, このL1 面上のリニアメントの南方延長部には, 図4−25に示すように, A1 面が断層推定位置を横断して分布しており, その堆積物の上部には支流からの細粒堆積物が期待されることから, 本地点においてピットを掘削し, 双葉断層の最新活動年代及びその鉛直変位量等について検討を行った(今年度ピット,栃窪北地点)。ピット調査結果は次章で述べる。