地表踏査結果によると,空中写真により判読されたこれらの低崖は,いずれも断層の位置と対応していることから,低断層崖である可能性が高い(図4−9)。
宇多川左岸にみられるL1 面上の低崖の比高を断層による鉛直変位量とみなし,地形測量を行った結果,L1 面での鉛直変位量は約1m〜約1.5mであり,比較的小さい(図4−10)。この鉛直変位量は,後述の宇多川右岸のL3−面上にみられる低崖から求めた鉛直変位量と同程度であり,時代の異なる両面で顕著な累積性が認められない。このことから,本地点においてトレンチ調査等を実施し,L1 面の年代,変位量を明らかにする必要がある(平成9年度調査候補地点1)。
一方,宇多川右岸においては,現在は人工改変により原地形が失われているが, 国土地理院により1975年に撮影された1/10,000空中写真によると,L3−面上に低崖が認められ,この低崖の地形測量結果から求めたL3−面での鉛直変位量は約1mである(図4−11)。柳沢ほか(1996)は,本地点において低位U段丘面を切る比高約 10mの低断層崖がみられるしている。しかし,柳沢ほか(1996)が指摘しているこの崖は,現在のL2 面とL3−面との人工的な崖であり,空中写真により判読される低崖はこの人工的な崖の東側約10mの位置のL3−面上に認められる(図4−11)。このL3−面の年代については,約2万年前〜約1万年前と推定されるが,テフラ等により特定できていないことから, 本地点においてトレンチ調査を実施し, 年代を明らかにするとともに,その変位量を確認する必要がある(平成9年度調査候補地点2)。