8 今後の調査計画

本調査の最終的な目的はトレンチ調査などによって活断層の履歴を明らかにし、起こり得る地震の規模や、最も近い将来の地震発生の時期を検討する資料を得ることである。このため、今後の調査は平成8年度調査によって断層の活動様がある程度明らかになった地区については、補完的調査を実施しより詳細な結論をえることを主眼とする。また、最終活動時期などが明らかにされていない地区についてはトレンチ掘削による本格的な調査実施が望まれる。

 本調査の結果から、今後調査が必要と考えられる調査地点・調査方法・数量・調査目的ならびに調査の優先度を表8−1に示した。実施候補位置は図8−1に示した。

 この調査候補地で実施を優先すべき地域は以下の地である。

・福島盆地西縁断層帯北東部区間

 この地域では、森山地区のトレンチ調査や他のピット調査によって断層の活動性に関する資料が収集されたが、各断層の最終活動時期や活動間隔の確定に至らず今後の調査の課題となった。特に最終活動時期の限定は藤田東断層から桑折断層にかけての区間が同時期に活動し得るか否かの判定に重要な意味をもつため優先して調査を実施すべき項目と考えられる。

1)桑折町睦合地区

 本調査でピット調査を実施したが、断層による変位の確定にいたっていない。この原因として掘削によって確認された地層が極めて新しい(縄文期以降)ことが考えられる。この下位には断層の活動履歴を明らかにするために必要な数千年〜数万年前の地層が堆積している可能性は高い。これらの地層と断層面あるいは断層による変形との関係を確認することでトレンチ調査の目的である最終活動時期・活動間隔・単位変位量を明らかにすることが可能である。

 また、この地域は福島盆地西縁断層帯のうち北東部の区間を代表する地点であり、北東部の断層が活動する場合には、必ず活動する位置であるためこの地点で得られる活動性の資料は地域全体の代表値(最大値)として扱うことができる。従って地域全体の評価に極めて重要である。

2)桑折町万正寺地区

 この地点では、西根堰建設の際の人工改変によって断層崖が失われているためピット調査によって十分な結論は得られなかった。しかし、睦合地区同様桑折断層(福島盆地西縁断層帯の北東部区間)の活動性を代表する地点である。

 このため、ピットならびにボーリング調査で得られた試料から、年代値と対比される地層の高度差を求めここから、縄文期以降の断層による変位量を求める。また、この地点では断層位置は確定できることから、この延長上で小型のトレンチ(深度2m程度)掘削による調査によって、断層の最終活動時期の確定を行う。

3)国見町森山地区

 トレンチ調査によって断層の活動様式ならびに位置に関する情報が多く得られた地区であるが、最終活動時期については確定に至っていない。このため、断層の位置が確定的な地点において小型トレンチ(深度2m程度)を実施し、最終活動時期を確定する。

 この結果は、万正寺地区、睦合地区との比較検討によって福島盆地西縁断層帯の北東部区間のうち新しい活動があった地域(藤田東断層−桑折断層に連続する区間)についての連続性や活動様式を明らかにするものとなる。

・福島盆地西縁断層南西部区間

 本調査における空中写真判読・地表踏査・浅層反射法探査・ボーリング調査から福島盆地西縁断層帯では北東部区間と南西部区間が不連続である可能性が高いと考えられる。従って、断層活動だ同時に起こらないことを確認することによってこれらの断層が起こし得る地震の規模も小さいと評価することができる。

 このことを明らかにするためには、南西部区間の台山断層や白津断層についての活動性の評価ならびに北東部区間との比較検討が不可欠となる。

4)福島市大笹生地区  

 福島盆地西縁断層帯のうち南西部区間(台山断層・白津断層)については、大笹生地区において、断層が2条に別れるうち西側の断層が、9,000年前以降の変位量が5.5m、最終活動時期が9,000年前から4,000年前の間に起こったことが明らかになった。

 ボーリング調査では、2条に分かれた断層のうち前縁部の断層位置の特定と、ここに分布する地層の年代が確定された。このことから、前縁部の断層についてトレンチ調査を行い前縁部の断層の最終活動時期を確定し、これを西側の断層と比較検討することで台山断層において最も活動が活発な区間での最終活動時期を明らかににすることが可能である。

ただし、この地点においては、約10,000年前より古い地層は全て粗粒な礫層となっているため、活動間隔や単位変位量の検討には不備な点が多く、調査目的は断層の最終活動時期に絞って行うこととなる。

5)福島市庭坂地区

 台山断層において地形変形が最も明瞭な地域であり、ボーリング調査によって断層の存在があきらかとなった。しかし、地形特性から想定される断層崖とボーリング調査によって確認された断層の位置には食い違いが見られる。また、確認された断層位置では約 2 0,000年前以降の堆積物が8m以下と薄いため、侵食などによる地層の欠落が考えられる。

 従って、この地区では台山断層の単位変位量や活動間隔を明らかにするための調査としてトレンチ調査の実施を検討すべきと考えられる。ただし、実施位置については明瞭な崖地形とボーリングによって確認された断層について評価し得る調査方法と数量が必要となる。