5−5 ボーリング調査結果まとめ

ボーリング調査では以下の項目についての結論が得られた。

1)トレンチ・ピットの実施位置確定のために行ったボーリング調査実施地点のうち森山地区では、断層が地表付近に達しいる地点が明らかあり、この地では断層に切られない地層が期待でき最終活動時期の検討が可能であることが明らかになった。

2)万正寺地区では、断層の正確な位置を言及するには不十分な調査結果となっているが、 断層の活動によりLU面mの堆積物の上に凝灰岩が乗り上げていることが明らかとなった。このことから、空中写真判読や地表踏査によって想定された桑折断層の更新世後期活動範囲は当所予測の位置にあたると判断される。

 また、ボーリング孔から得られた年代値は、単独では断層の最終活動時期や活動間隔に言及するには至らないが、周辺の地層、特に更新世後期の地層との対比や高度差の確認によって、特定の時期以降の累積変位量や最終活動時期の検討材料を得ることは可能となった。

3)大笹生地区および庭坂地区では断層が想定される位置を横断してボーリング調査を行い断層位置、トレンチ実施位置の検討を行った。また、ボーリングによって得られた試料から堆積物の年代を測定し、トレンチ実施した場合出現する地層の時代・厚さなどを検討した。この結果、大笹生地区では空中写真判読などで想定された断層崖に地層の大きな不連続がみられる。この不連続が断層による可能性は高く、断層の活動が4,000年前以降に起こったことも考えられる。

 この地点ではトレンチ調査の候補地とされるが、下盤側にあたる位置の平坦面では時代の異なる地層の分布が見られるものの、地層が累乗しておらずトレンチ掘削を行った場合、深部における時代面の細分が困難でとなる可能性がある。

4)庭坂地区のボーリング調査からはこの地域の沖積面下にはシルト・泥炭・砂礫などが分布し、地層の細分が行える点でトレンチ候補地としては有利な要素をもっていることが明らかとなった。また、実施したボーリング孔の最も南側のものには基盤岩が繰り返し 出現し、年代値の分布も上下の逆転が存在することが明らかとなった。従って、この前面部で断層が地表近くに達している可能性が高い。

 ただし、この位置では地形形状からみた断層とは食い違いがあり、また、ボーリングから得られた堆積物の年代と変位量に調和が見られないため、トレンチ実施の最終決定までには、この地域の侵食過程を含めた再検討を要する。

5)東湯野地区では、空中写真判読で撓曲崖の可能性が高いと判断された地形が断層活動による変位地形であることがほぼ確実となった。従って桑折断層の連続は更新世後期に限れば西に向かう連続をもつのではなく、南に連続すると判断される。

 ここでの変位は断層による地層の食い違いを伴う可能性は少ないが、高度差を発生させた断層活動は、約15,000年間に5mの高度差を発生させたことになる。この変位量は約0.3m/1,000年となり、従来知られる桑折断層の変位量に比べると小さい。

表5−1ボーリング孔分析結果一覧