4−6−1 既往地質概要

福島盆地周辺の新生界は、塩基性〜中性の溶岩・火砕岩・凝灰岩で始まり、海成の下部中新統最上部〜上部中新統下部と、これに不整合に重なる淡水性の上部中新統中部〜下部鮮新統からなっている(北村、1986)。これらのうち、中部中新統〜上部中新統中部は凝灰岩・火砕岩に富み、一部に酸性溶岩を挟んでいる。下位からの層準は、今回実施した地質調査の結果、桑折層、梨平層、天王寺層、赤川層となっていると考えられる。調査測線の上あるいは近接地区で梨平層の露頭が確認されている事から、測線位置では極浅部に於いても梨平層の存在が示唆される。

 この事はトンネル建設に先立ち実施された事前調査の結果、トンネルより上部にも梨平層が存在している事と整合する。この地域の新第三系の構造は、全体として緩やかで褶曲構造は殆ど見られない様である(北村、1986)。

 図4−20に調査地周辺の広域的な地質図を東北地方土木地質図(1988)より抜粋し、ブーゲー重力異常の1mgal毎のコンター図(山形地域重力図、1991)を重畳して示してある。図中には、二つの調査測線の位置とその周辺の代表的な地質区分についても示した。これからも判るように、重力異常値の変化が大きな地域は福島の市街地を北東から南西に横断する地域に帯状に存在しており、調査対象地域はそれから外れた重力異常値の変化が小さい所に位置している。従って、大規模な構造変化は調査地からはずれた福島市の市街地直下の深部に存在している可能性がある。調査測線周辺の地表地質は、大まかに言えば、北西側で古く、南東側へ進む程新しい地層になっている。即ち、調査地の東側と南側では沖積層や段丘堆積物等の第四紀の比較的新しい地層で覆われているのに対し、北側や西側では赤川層或は梨平層相当層等の第三紀のやや古い地層が露出しており、更に北西方向へ進むと白亜紀の花崗岩の露頭になる。