11月6日、飯坂町内の旅館に宿舎兼事務所を開設し、班長以下班員の入班、関係各所への開始挨拶、資機材の搬入を行い、直ちに準備作業を開始した。なお、測量は当社の監督者が作業に先立って現地入りし、請け負った現地の測量会社を監督して準備を進めた。作業順序は、車両の通行量や展開の進行を考慮してLine−2, Line−1 の順で行うこととして、展開作業およびラインの手直しが完了した11月7日、Line−2 南端付近でフィールドテストを実施してパラメータを決定、これに引き続き本観測を開始した。インパクタの発震は、路面の舗装を傷める可能性があるため、発震点杭をはさんでその極近傍で6回づつ2 回に分けて行った。
作業の最終観測は11月11日に無事終了し、機材の撤収・整理・発送、資材置き場の整地復旧作業の後、関係各所への終了挨拶を行って11月13日に調査を終了した。
本現場作業の稼働実績を以下に示す。
測線名 観測期間 観測方向 測線長 発震点数 有効発震回数
Line−1 11/10〜11 S to N 1245 m 119 点 1398 回
Line−2 11/ 7〜 9 S to N 1150 m 108 点 1266 回
・総測線長:2395 m(計画 2000 m)
・総発震点数 / 有効発震回数:227 点 / 2664 回(計画 160 点 / 1920 回)
<調査工程>
11月 6日(水) 班員入班
資材受取り
11月 7日(木) Line−2展開作業
パラメータテスト
Line−2本観測開始(4点)
11月 8日(金) Line−2本観測(79点)
11月 9日(土) Line−2本観測終了(25点)
Line−1展開作業
11月10日(日) Line−1本観測(76点)
11月11日(月) Line−1本観測終了(43点)
撤収作業
11月12日(火) 資機材集結,発送
11月13日(水) 全班員離班
<設営場所>
事務所 / 宿舎 福島県福島市飯坂町湯野字切湯ノ上 2
新松葉旅館 内
資材置き場 福島県福島市飯坂町銀杏 15−2
福島市飯坂南部土地区画整理事務所 脇
(2)フィールドパラメータテスト
本観測に先立ち、最適なデータ取得パラメータを決める事を目的としたテストをLine−2の南側に129CHを展開して、その南端のSP.231で実施した。これらの結果は Fig.4 にまとめて示した。
・スタック回数のテスト
9回,12回,15回,18回の4ケースに関し、9回目以降は3回ずつ加算しながらデータを取得した結果、12回以上では顕著な質の改善が見られないため、12回を標準とした。
・Diversity Stack の重みのテスト
重みの次数に関し、1乗と3乗の比較を行ったが、顕著な差異が見られなかったので1乗を採用した。
・低域遮断フィルターのテスト
8Hz、12Hz、16Hz、20Hzのテストを行った結果、フィルター処理を行わない記録と比べるとランダムノイズの低減に効果は見られたが、表面波に対しては殆ど効果が見られないため8Hzを採用した。
(3)観測作業
パラメータテストの結果に基づき、以下のデータ取得仕様により観測作業を行った。
<記録系>
チャネル数 (Line−1) 188 ch
(Line−2) 129 ch
Near Trace Gap Non
展開方法 固定および Roll along
データ取得方法 End on shooting
記録長 3 sec
サンプリング間隔 2 msec
フィルター (Low Cut) 8 Hz/18dB/oct
(High Cut) 180 Hz/72dB/oct
プリアンプゲイン 36 dB
ゲインモード I.F.P
ノイズエディット(ウインドウ長) 3 sec
(サプレッションファクタ) 1 乗
<発震系>
震源 油圧インパクタ(JMI−200)1台
発震点間隔 10 m(標準)
発震回数 / 点 12回(標準)
(路面陥没回避のため 6回×2箇所で実施)
<受振系>
受振点間隔 5 m
受振器 McSeis−122H
固有周波数 27 Hz
受振器/点 9個(3 series × 3 parallel)
受振器配列 標準 55 cm 間隔 直線配列
展開長/点 4.4 m
(4)その他(現地状況に関する特記事項)
1) 住民への周知
理想的な周知は、準備段階における関係町内会の会長(地区長)を集めての合同説明会の開催と協力依頼の配布、実作業直前の隣接家屋の個別挨拶等の手段があるが、本調査の準備期間が極端に短かったことから町内会長を対象とした説明会の開催はできなかった。この代替え措置として、福島市の協力を得て関係10町内会に調査内容を示したチラシを配布し、回覧の依頼をお願いすることで調査実施を事前に通知する用つとめ、班員入班に合わせて関係町内会長宅を個別訪問して協力を要請した。本調査の測線長は比較的短く、測線に隣接する家屋は両測線を合わせても20軒程度と少ないことが幸いして、地元住民への周知に時間を多く費やすことはなかった。また、地元住民は皆協力的で、現場における問い合わせや苦情は1軒も発生せず、関係各所への苦情等も全くなかったことを終了挨拶時に確認した。
2) 埋設物について
事前準備段階で上水道埋設管と都市ガス埋設管の存在が確認された。前者は外径75〜250 m/mの鋳鉄管で、後者は外径50〜80 m/mプラスチック管である。埋設場所はいづれも歩道下であることと、震源がインパクタであり直上部での発震を避ければ及ぼす被害はないものと判断されたが、逆に埋設管の共振によるノイズが当方のデータに混入することが懸念されたため、受振点の設置や発震位置は可能な範囲内で埋設物から遠ざけて設定する等配慮した。
3) Line−1における爆音ノイズ
周囲が果実園であるLine−1では、果実に鳥が近づかないよういたる所で非周期的な爆音が鳴り響いていた。データ取得中に鳴った場合は音波として記録に混入するため、ノイズモニタを注視して混入したスタック記録については加算せずに破棄し、改めてスタック記録を取得する他手段がなかったが、進捗の著しい低下を招くことはなかった。