この地区の高田層は七面大明神の社より下流の谷壁に連続して観察され、下流側では東向きの急傾斜を示し、上流では傾斜方向が西に向かう。この間には小規模な背斜構造が確認された。この地区に見られる孤立丘はこの背斜構造の影響によって基部が形成されている可能性が高い。
断層は上記の孤立丘を挟んで2条に別れる。このうち西側のものはIw131においてLV面を切っていることが確認された(図3−28、写真3−19)。この段丘面の年代として新屋(1984)は10,220±240y.B.P.の年代値を示している。従って、この断層の最終活動時期が1万年前よりも新しいことは明らかである。
断層面が確認された断層沿いの変位量はLV面の約5.5m(図3−28)である。この断層延長上では断層東側に分布するM面と西側のM面の基底高度差は約30mとなっている。この段丘面の形成年代を被覆する火山灰から8万年〜10万年程度と見積もるとこの断層の平均変位量は約0.3m/1,000年となり、従来知られる台山断層の平均変位量に対して小規模なものとなる。
しかし、山地と平野部の境界となっている断層ではLU面に約10〜8mの高度差があり、これから求められる変位量を加算すると断層全体では1m/1,000年の平均変位量をもつことになり、従来知られている台山断層の平均変位量と調和的である。このことから更新世後期における断層活動は西側の断層よりも前縁部の断層の変位量が大きいことが考えられる。また、前縁部の断層もLV面を変位させていることから、前縁部の活動が大きくかつ最新の活動が西側と同時に起こった(あるいはより新しい)可能性もある。