(5)福島市飯坂−中野地区

この地区では台山断層の連続と活動性について明らかにするためやや広い範囲を精査地区とした。この地区では北側の山地および丘陵地には中新世〜鮮新世の梨平層、赤川層が分布している。梨平層は粗粒の砂質凝灰岩が優勢であるが、赤川層は細粒のガラス質凝灰岩の占める割合が多く、層理の発達が良い。これらの地層は北もしくは東に向かって緩やかな傾斜を示すが、赤川沿いの地域では赤川新橋の上流200m付近と同じく上流1km付近では地層がほぼ直立する急傾斜部が見られる。

丘陵部には高位〜中位段丘が断片的に分布しているが堆積物は確認されていない。低位段丘は飯坂市街地に広く分布している。小川の両岸にLT,U面が比較的連続良く分布し新小川橋の下流には沖積段丘も連続する。

この地区において断層が確認されたのはSS56,57とSS40である。このうち、SS57では逆断層のセンスを持つ小断層が観察されることから、主断層は逆断層である可能性が高いと考えられる。また、この断層は更新世前期の地層とされる高田層をほぼ直立させていることから、断層活動が高田層堆積以降繰り返し起こったことが考えられる。

これに対して、櫻井(1985)に記載された断層面やSS40で見られる断層面付近では、高田層礫岩に断層活動の累積性を示すほどの地層の変形は確認されない。従って、地質踏査の結果から台山断層の連続は図の位置であると判断した。

この区間では南部地域でLU面に変位が明らかではないこと、赤川沿いではLT面とLU面の比高が下流に比べて大きくなっているものの、寺畑地区ではLU面に変位が認められないことから、新しい時期には断層が活動していないかあるいは小規模な活動であったものと考えられる。

赤川沿いのルートでは、梨平層および赤川層は一般には緩やかな傾斜をもっている。しかし、図に示した台山断層の延長部では地層の急傾斜と破砕が確認された。また、水割地区では約300mの区間でスランプ構造と地層の急傾斜が観察された。この地層の急傾斜がこの水割地区の地形形態に影響していると考えられるが、未固結の破砕帯や第四紀層の変位は確認されていない。