既存の文献等において国見山下−滝山−源宗山の北側に示される北下がりの断層についても有力な根拠は見いだせていない。ただし、活断層が想定される滝東付近では中新世の地層が急傾斜していることが観察されるのに対し、硯石から滝川橋付近にかけての凝灰岩の葉理はほぼ水平である。
国見町上野、森山から大木戸にかけての丘陵地には、赤川層に対比される可能性の高い軽石質凝灰岩が分布する。丘陵の頂部には緩やかな起伏を持つ平坦面も観察されるが、ほとんどの場合堆積物は確認されず、凝灰岩が露出している。これらの凝灰岩の層理面はほぼ水平である。
断層の想定される位置から南東側では凝灰岩の露出はなく、工事露頭などの観察では厚さ5m以上の砂・シルト層が認められる。また、国見町徳江において実施されたボーリング調査では深度59mで凝灰岩に到達している。この凝灰岩や基底の礫層の対比は不明であるが、丘陵地にみられる凝灰岩との高度差は約100m程度となる。
以上から当地域に連続する藤田東断層は赤川層もしくは梨平層と第四紀層の地層境界となっており、断層沿いの赤川層、梨平層では断層活動による変形が起こっており、第四紀層にも撓曲による地層の急傾斜が考えられる。ただし、この変形・撓曲の幅は第四紀層では最大でも50m以下と思われる。
図3−16は地形面の保存が良くLT,LU面以降の段丘の変位に累積性が認められる地域(国見町森山地区)を精査地域として詳細地質図を示した。